【第1章第42話 山形クロスロード・再会する街角】
再巡行ルートの列車は、朝靄の蔵王連峰を越えて山形へ向かっていた。
車窓の外には、紅葉の色と雪の白が混ざり合う。
翔はその風景を見つめながら、心の中で整理していた。
「再巡行……それは過去の道をもう一度歩くこと。」
仙台を出てから、わずか数時間。
だが端末上のマップには、別ルートの光点が同時に動いている。
関西方面・岡山、北陸方面・金沢、そして九州方面・熊本。
どの点にも“既知の名前”がちらついていた。
――佐久間悠真、岩永蓮、千堂葵。
「みんな、別の場所で旅を続けてるんだな。」
玲奈が静かに頷く。
「でもどこかでまた合流する。そういう作りの旅だから。」
山形駅に到着すると、雪混じりの風が吹いた。
駅前広場に、ひとりの女性が立っていた。
「……おかえり。」
日比野結衣だった。
「私たち、こっちルートで“記録復旧班”になってる。」
翔が苦笑する。
「また君が先回りしてるとは思ったよ。」
その時、街中のスクリーンが点灯する。
『クロスロード・イベント開始。
各ルートの記録を同期せよ。出現条件:既知の再会。』
結衣が手元の端末を操作し、呟いた。
「つまり、誰かと再会しないと次に進めないってこと。」
玲奈が辺りを見回す。
「でも誰と?」
その瞬間、向かいの商店街から声がした。
「おーい!」
雪の向こうから走ってくる人影。
岩永蓮だった。
「久しぶりだな! 中部ルートからワープ召喚された!」
唐沢が笑う。
「お前、またシステムに好かれてんな!」
御影慎も合流し、端末を確認する。
「クロスロード・ポイント成立。記録同期開始。」
スクリーンに表示される文字列。
『統合成功。新規ルート接続:山形-金沢ライン。』
結衣が安堵の息をついた。
「これで東北と北陸ルートが再びつながる。」
蓮が空を見上げる。
「だけど、空が変だぞ。」
山の方角――空の一部が、微かに歪んでいた。
滝口空の声が響く。
「記憶が重なりすぎてる。誰かの選択が、同じ時間を二度書いてるんだ。」
翔は息を呑む。
「つまり、この街には“もう一つの俺たち”がいるってことか。」
レオンの実況が重なる。
「クロスロード・イベント第2段階! “自己遭遇”フェイズ突入!」
街の時計台が鳴り響き、光が走る。
そこに現れたのは――
過去の記録から抜け出した、もう一組の翔たち。
“影の旅人”。
(第1章第42話 了)




