【第1章第40話 函館ナイトリンク・過去を選ぶ街】
函館の夜。
港の光が霧を透かして揺れていた。
ガラス張りのターミナルビル内には、参加者たちの影が並ぶ。
全国から集まったルートメンバー。
誰が固定で、誰がモブかは誰にもわからない。
ただ、それぞれが異なる旅の記憶を背負っている。
「これが、“過去を選ぶ街”……か。」
翔が呟く。
床面に浮かぶホログラムマップには、各地での選択肢が点滅している。
東京、金沢、神戸、福岡、札幌。
それぞれの街に「未完了ルート」として、記録の穴が表示されていた。
御影慎が腕を組む。
「ターミナルミッションの意味は、“修正”だ。過去の選択を再構成し、全国の記憶を同期させる。」
結衣が端末を操作する。
「つまり、ここから先は“もう一度日本を辿り直す”ってこと。」
唐沢陽介が目を輝かせた。
「レベル上げパート再開ってわけだな!」
葵が笑う。
「あなた、ほんとゲーム脳ね。」
そこへレオンの実況が響いた。
「ナイトリンク開始! 本日から“再巡行ルート”を選択可能!
北ルート=函館→東北→関東。
中ルート=信越→北陸→中部。
南ルート=中国→四国→九州。
さらに、“ゴーストルート”=記録の外側、存在しない街。」
会場がざわついた。
桐谷美羽が小声で呟く。
「存在しない街……?」
その言葉に、滝口空がゆっくりと応じる。
「記憶の外にある街。それは、誰かが“忘れた現実”。」
唐沢が腕を組んだ。
「ゴーストルート、面白そうじゃん。」
「でも危険よ。」と葵。
「データ上、帰還率が低いって……」
玲奈が深呼吸し、言った。
「でも行かなきゃ、真実には届かない。」
翔はマップを見つめた。
「どのルートを選んでも、きっとどこかでまた合流する。」
御影が微かに笑う。
「それがこのゲームの“構造”だからな。」
その時、アナウンスが流れる。
『ルート選択締切まで残り60秒。』
参加者たちの視線が交錯する。
誰がどの道を選ぶか――わからないまま。
時計が零を指す瞬間、港全体が光に包まれた。
各地へ向かう列車、フェリー、飛行機が同時に発車する。
翔たちの端末に新しい文字列が浮かぶ。
『再巡行ルート:東北ライン・起点“仙台”』
レオンの声が重なる。
「いよいよ全国中盤戦! 再び日本が、盤上に広がる!」
霧の中、列車のライトが夜空を裂く。
誰もが、自分の“記憶の続き”を探しに向かっていた。
(第1章第40話 了)




