【第1章第39話 函館リターン・霧のターミナル】
夜明けのフェリーが青森港を離れる。
霧の向こう、海面は薄い金色を帯びていた。
神原翔はデッキに立ち、冷たい潮風を受けていた。
背後から声がする。
「翔、眠ってないでしょ。」
葉山玲奈がホットドリンクを差し出した。
湯気の向こうで、彼女の瞳が少し赤い。
「うん。どうしても、頭の中で地図が繋がらなくて。」
「方向音痴のくせに、考えすぎ。」
「……否定できない。」
二人が笑うと、霧がわずかに晴れた。
フェリーの先に、函館山の稜線が浮かび上がる。
その瞬間、船内放送が響いた。
『第1章 青函リターン・ターミナルミッション開始。
全ルート統合チェック:通信確立。新規参加者データ、同期完了。』
桐谷美羽がデッキに飛び出してきた。
「新規参加者って、まさか……?」
御影慎が端末を開く。
「識別コード:遠野栞。登録地・盛岡。前回脱落扱いだが、今ここで復帰。」
唐沢陽介が目を丸くした。
「ゴースト復活パターン……リアルタイム召喚!?」
船が函館港に近づく。
霧の中から現れた人影――
白いコートに青いマフラー、凛とした瞳。
「……久しぶり。」
その声に、美羽が小さく息をのむ。
「やっぱり、遠野さん……!」
港の上空で、電光掲示が点滅する。
『ターミナルミッション:過去ルート記録を再生。答えを選択せよ。』
結衣が眉をひそめた。
「記録の再生……つまり、以前の行動が問われる。」
翔が頷く。
「選択の連鎖、か。」
霧が濃くなり、港の時計塔が歪んで見える。
音もなく現れたのは、もう一人の影。
滝口空。
「“選択”ってやつは、いつも遅れて響くんだ。過去が、今を決める。」
彼の言葉に、玲奈が微笑む。
「じゃあ、選び続けるしかないね。」
フェリーの汽笛が再び鳴り響く。
レオンの実況が重なる。
「ターミナルステージ突破条件――“もう一度、出会うこと”!」
霧が裂け、港の光が広がる。
そこには、各地から到着した参加者たちの列。
東北ルート、関西ルート、九州ルート、そして新規召喚メンバー。
全国の道が、再びここに交わる。
(第1章第39話 了)




