【第1章第38話 記憶のフォロワー・青森シグナル】
青森港。
吹雪の中、フェリーの汽笛が低く響く。
霧の奥からゆっくりと現れる列車のヘッドライト――
その光は、北と南、ふたつの旅路を繋げるように交差した。
神原翔たち北陸ルート組は、港のデッキに集まっていた。
「ここで……誰かを待ってる気がする。」
葉山玲奈が言った。
雪の中、電波が乱れ、通信端末の画面が波打つ。
そこに映ったのは、見覚えのある顔。
「……唐沢?」
「おーい! 聞こえる!?」
ノイズ混じりの声。網走からの中継だ。
その瞬間、レオンの実況が入り込む。
「来たぞ! “北陸-北ルート完全リンク”発動! 記憶フォロワーが共鳴中!」
雪が渦を巻く。
翔は目を細めた。
霧の中から、人影が現れる。
白いコート、無線機を手にした男。
――滝口空。
どちらのルートにも属していたはずの彼が、静かに立っていた。
「おかえり。」
蓮の言葉に、滝口は笑った。
「ただいま……たぶん、少し前の時間から。」
御影慎が端末を見つめる。
「データ上では彼は“消失扱い”のまま。つまり、実体が戻ったわけじゃない。」
結衣が囁く。
「でも、声がある。姿も見える。」
葵が頷いた。
「記憶フォロワー……“思い出された存在”として再構成されたんだ。」
滝口は静かに目を閉じた。
「俺、あの時……消えたんじゃない。誰かの“選択”の結果、道が変わっただけ。」
翔が一歩近づく。
「それがゴースト推理の鍵か。」
港の電光掲示が切り替わる。
『青函ミッション:再接続完了。全ルート統合テスト開始。』
レオンが声を弾ませる。
「全国ルート、ここで再びひとつに! 次の目的地は――函館!」
エマの声が穏やかに続く。
「記憶の線は、まだ途切れていない。」
フェリーの汽笛が再び鳴った。
雪明かりの中で、翔たちは並んで立つ。
港の先、薄いオレンジ色の光が広がっていた。
それは、夜明けと次の旅立ちの合図だった。
(第1章第38話 了)




