表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/50

【第1章第37話 流氷ライン・網走ブリザードゲーム】

列車が網走駅に滑り込む頃、窓の外は白と青の境界だった。

 オホーツク海を覆う流氷が、風で軋みながら押し寄せてくる。

 唐沢陽介は息をのんだ。

 「……現実でこんな景色見られるとか、やばい。」

 千堂葵が帽子を押さえる。

 「凍った海って、音があるのね。パキパキって、まるで息してるみたい。」


 構内アナウンスが流れる。

 『網走ステージ“ブリザードゲーム”開始。制限時間は90分。

 脱出条件:ゴーストシグナルを解析し、“出口座標”を再構成せよ。』


 御影慎が手袋越しに端末を操作する。

 「これは単なる推理イベントじゃない。座標再構成……つまり“現実空間の書き換え”だ。」

 日比野結衣が頷いた。

 「滝口空のデータ、また反応してる。青森側から残響が届いてる。」

 唐沢が眉を上げる。

 「またあいつか。幽霊でもいいから、ヒントくれよな。」


 雪の中に、薄い光の柱が立つ。

 葵が指をさす。

 「あれがゴーストシグナル?」

 御影が即答した。

「たぶん。行くぞ、全員で。」


 五人は雪をかき分け、流氷の岸辺へと進む。

 風が強くなり、地面がきしんだ。

 その瞬間、全員の端末が同時に光る。

 『再構成開始:座標01 → “氷上の扉”』


 唐沢が叫ぶ。

 「出口、出た!」

 だが、その座標は奇妙だった。

 表示された場所――“青森港”。


 結衣が息を呑む。

 「これ、別ルートと繋がってる……」

 御影は冷静に分析する。

 「つまり、ゴーストシグナルの出口は“過去の場所”。時間軸が逆流してる。」


 氷上に、ぼんやりと人の形が浮かぶ。

 滝口空。

 彼はゆっくりとこちらを見つめ、口を動かした。

 「出口は……“記憶の中”にある。」


 次の瞬間、氷が砕け、白い霧が辺りを包んだ。

 唐沢が叫ぶ。

 「全員、リンク解除だ!」

 御影が手を伸ばすが、視界は真っ白に消えた。


 気がつくと、彼らは再び駅構内に立っていた。

 レオンの実況が響く。

 「ブリザードゲーム、クリア扱い! ただし座標異常発生、再構成中!」

 エマが告げる。

 「出口は“青森港”。これは、北ルートが北陸・東北ルートと完全接続する予兆。」


 御影は深呼吸した。

 「これで、ようやく“交わる”かもしれない。」

 雪の向こう、列車のヘッドライトが二本の光を描いた。

 それは、南から延びてくる“別ルート”の合流線。


(第1章第37話 了)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ