【第1章第36話 氷の街ミッション・旭川ホワイトコリドー】
旭川駅に降り立った瞬間、吐く息がすぐ白く凍った。
構内のガラスには、旅人たちの影がいくつも映っている。
唐沢陽介が肩をすくめた。
「ここ、マジで冷凍ステージじゃん……」
千堂葵が笑う。
「寒さもミッションのうちよ。動けば体も温まる。」
掲示板が一斉に点灯した。
『ホワイトコリドー・チャレンジ:5名同時行動』
ルールは簡単だ。
――指定エリアを徒歩で抜け、途中に出現する“記憶コード”を回収。
時間制限は60分。
成功すれば、次の都市への“パスカード”を獲得できる。
御影慎が腕時計を確認する。
「気温マイナス11度、風速4メートル。体温低下に注意。」
結衣が笑う。
「理系データ管理、頼もしいね。寒いのにテンション上がるわ。」
五人は雪の中を進み始めた。
街路灯が連なる通りを抜け、凍った川沿いを歩く。
その途中、空中に青い光が浮かび上がる。
『記憶コード:F-93』
唐沢が手を伸ばしてタッチした瞬間、頭の中に声が響いた。
――「戻れると思う?」
彼は振り向いた。
白い霧の向こうに、人影が立っていた。
滝口空。
しかし、雪の粒を透かして見えるその姿は、輪郭が揺らいでいた。
葵が小さく呟く。
「ゴーストイベント……また出たのね。」
御影が端末を操作する。
「波形が反応してる。これは幻じゃない、“リンク”。」
霧が一瞬だけ晴れ、滝口の声が届いた。
「みんな、俺……どっかで見てる気がするんだ。別の場所から。」
唐沢が叫ぶ。
「どこにいるんだよ!」
しかし、返事は風の中に消えた。
エマの実況が重なる。
「旭川ステージ、初の“ゴーストリンク”確認! 他ルートとの信号が雪中で交差!」
レオンが興奮気味に叫ぶ。
「これぞ北ルートの醍醐味! 寒波を越えた先に、何が待つ!?」
雪原の果てに、淡い光が浮かんでいた。
パスカードだ。
御影が拾い上げ、端末に読み込む。
画面に表示された次の目的地は――「網走」。
唐沢が拳を突き上げた。
「よし、監獄ステージ行こうぜ!」
葵が苦笑する。
「あんた、ゲーム感覚すぎるわよ……」
結衣が微笑む。
「でも、その勢いが必要かもね。」
雪の街を後に、列車が再び動き出す。
その車窓に、もう一つの光が重なっていた。
――新潟側の列車。
遠いはずの別ルートが、同じ雪の中で交差しているように見えた。
(第1章第36話 了)




