【第1章第35話 雪線サバイバル・北緯43度のルーレット】
札幌駅前、夜明け。
吹きすさぶ雪の中に光る電子掲示板が、一行だけを映し出していた。
「北緯43度ルート ミッション開始」
唐沢陽介はスーツケースを抱えながら、息を白く吐く。
「うわ、寒っ……でも、ここがゲームの本番って感じだな!」
隣では千堂葵がマフラーを直しながら笑った。
「九州組はまだ温泉中だって。こっちは雪中行軍ってわけね。」
今回のルールは単純だった。
――札幌から旭川、網走を経て稚内まで、公共交通のみで北上。
途中には“ルーレット駅”が数カ所設置され、止まった場所の行動内容が変化する。
最初のルーレットを回したのは、日比野結衣。
針が指したのは「資金封鎖+乗車無料チケット」。
「……どっちも極端ね。」
御影慎がため息をつく。
「経済バランスめちゃくちゃだな。」
駅の構内放送が流れた。
『ワンダーボンビー、近郊線を移動中』
その瞬間、唐沢のICカードが光った。
「え、ちょっと待て、俺の残高が……!」
表示された残高は「−999」。
葵が吹き出す。
「アンタ、いきなりボンビー引いたの?」
「運の神様、俺に厳しくない!?」
笑い声の中、ホームに入ってきた特急ライラック。
列車の車体には雪が貼りつき、ライトが白く反射している。
結衣が窓を見つめてつぶやく。
「この雪、どこまで繋がってるんだろう。南のチームとも……」
御影が頷く。
「位置データ上では、他ルートが北陸で動いてる。
いずれこの雪が、海を越えて届く。」
唐沢がルーレットの針をもう一度弾く。
出たのは“ゴーストイベント”。
霧がホームに流れ込み、空気が静止した。
誰かの声が、遠くで囁く。
「覚えてる? あの日の列車……」
霧の向こう、輪郭だけ見える人影。
――滝口空。
彼の姿は、一瞬で雪に溶けて消えた。
葵が唇を噛む。
「これが、“記憶フォロワー”……?」
御影は小さく答えた。
「おそらく、別ルートとの共鳴現象だ。」
列車が発車する。
札幌の街が遠ざかり、雪の中に残る足跡が光の線になって消えていく。
MCレオンの声が重なる。
「北緯43度ルート、先頭集団突入! この先は“極光ステージ”へ!」
エマの声が静かに続いた。
「雪が繋げるのは、記憶と道。
次の目的地、旭川――“氷の街のミッションフィールド”。」
(第1章第35話 了)




