【第1章第33話 嵯峨野クロスロード ― 消えた声の行方 ―】
京都・嵯峨野の竹林を抜ける風が、かすかに笛のように鳴いた。
神原翔たちは、通過ミッション「古都の記憶ルーレット」を終えたばかりだった。
観光客の中に紛れた参加者たちが、それぞれの端末を操作している。
表示される指示は一行――「次の行先は“霧の向こう”」。
葉山玲奈が眉を寄せる。
「これ、地名じゃないよね……」
御影慎が頷いた。
「おそらく、“ルート転送”の暗喩だ。特定条件で位置が飛ぶ。」
そのとき、霧の中から声が聞こえた。
「――もう一度、やり直せるなら」
全員が振り返る。
そこにいたのは、滝口空。
いや、確かに彼は先週、脱落していたはずだった。
蓮が笑う。
「おいおい、復活イベント? こっちの演出、早くない?」
翔は端末を見た。
「……信号値、正常。これは“再生”じゃなく“同期”。」
エマの実況が入る。
「霧の交差点発動。北陸転送ルート開放!」
地面が光り、竹林が水面のように揺れた。
玲奈が手を伸ばす。
「この先……どこへ行くの?」
翔が答える。
「たぶん、日本海の方角だ。」
霧の奥に、港町の輪郭が浮かぶ。
敦賀。
けれど、すでに“次の旅”の入口が見えていた。
(第1章第33話 了)




