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【第1章第32話 分断フィールド・北緯41度】

閃光が収まると、そこは夜の函館だった。

 しかし街の輪郭は歪み、灯りが断片的に点滅している。

 雪に覆われた路面電車のレールが、迷路のように複雑に入り組んでいた。


 MC橘レオンの実況が途切れがちに流れる。

「ここは“分断フィールド・北緯41度”。各プレイヤーはランダムな地点に転送されています。

 通信不能。互いの位置情報は失われました」


 神原翔は、ひとりで旧市街の坂道に立っていた。

 スマホのGPSは狂い、コンパスも回転を続けている。

「情報がすべて無効化された……。理論も、確率も、頼れない」


 一方、葉山玲奈は元町の教会跡地にいた。

 鐘の音が響くたび、足元のタイルが変化する。

 白から黒へ、黒から白へ――“信頼”と“疑念”を示すかのように。


 唐沢陽介と桐谷美羽は、港エリアに転送されていた。

 唐沢が焦り混じりに笑う。

「まるでボードゲームのマップだな。運次第でどこへでも飛ばされるってか」

 美羽は耳を澄ます。

「ねぇ、聞こえない? 他の人たちの声が……重なってる」


 港倉庫の壁面に映し出された、他プレイヤーたちの“記録映像”。

 過去の会話、裏切り、選択――それらがランダムに再生されている。

 それを見た千堂葵がつぶやいた。

「これは“心理トラップ”ね。互いを疑わせて、分断を深める仕掛け」


 日比野結衣は、古いトンネルの奥で端末を起動させた。

「……通信網の断層。ここを抜ければ、全員を再接続できるかも」

 御影慎が背後で頷く。

「危険だ。フォロワーがこの領域を維持している。触れれば巻き戻されるぞ」

「それでも、進む。誰かが繋ぎ止めないと、ゲームが人を壊す」


 その瞬間、トンネル内の光が青く染まった。

 霧生ナオの声が反響する。

「信頼を望むなら、孤立を恐れるな。

 分断の中で選ぶ“ひとつの言葉”が、再結線の鍵になる」


 各地に散ったプレイヤーたちが、同時にその声を聞いた。

 空に浮かぶ巨大な座標数字――41.773°N。

 そこへ全員が導かれるように歩き出す。


 再び実況レオンの声。

「プレイヤーたち、北の交点へ集結中! “分断フィールド”の中心で、何が起こるのか!

 次回、“再結線プロトコル”。信頼の値がゼロになる前に、彼らは間に合うのか!?」


(第1章第32話 了)

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