【第1章第31話 函館トライアル】
青森・ワンダーハーバー。
夜明け前の港に、薄い霧が漂っていた。
中央の“記憶保管カプセル”が静かに開き、内部から一枚のカードがせり上がる。
MC橘レオンの実況が流れる。
「ここからが北海道ステージへの最終試験、“函館トライアル”です!
各プレイヤーは、自分宛ての“記憶カード”を開封せよ!」
十枚のカードが配布される。
それぞれに刻まれたキーワード――【迷い】【嘘】【保留】【守護】【消失】【選択】【代償】【絆】【孤独】【再起】。
葉山玲奈のカードは【嘘】。
「……あのとき、わたし……神原さんに“押してない”って言ったけど」
神原翔が小さく頷く。
「本当に押したかどうかなんて、もう関係ない。問題は“何を信じたいか”だ」
その会話を、スクリーン越しの御堂エマが見守っている。
「いいですね。真実は記録に残るけれど、信頼は選択に宿る」
フェリーが津軽海峡を渡る。
朝の光が差し込み、海面が銀色に輝いた。
唐沢陽介が甲板でつぶやく。
「これで、ようやく“日本全国予選”の北端か……」
千堂葵が笑う。
「まだ終わりじゃないわ。北の地には“最初の敗者”が眠ってるって噂、覚えてる?」
函館港が近づく。
岸壁には、巨大なボードゲームのようなステージが組まれていた。
マス目状の道路、数字が刻まれた信号柱、そして中央には回転するルーレットタワー。
MCレオンが高らかに宣言する。
「函館トライアル――“ルーレット・オブ・トラスト”開幕!
ここで勝ち残ったプレイヤーが、北日本ルートの代表として次フェーズへ進みます!」
唐沢が笑う。
「来たな、運ゲー本番!」
岩永蓮がスニーカーを鳴らして構える。
「ステップも運も、ノリで行くしかねぇ!」
だが、ルーレットが回る直前、ステージの照明が落ちた。
スクリーンに映る警告文。
【システム侵入検知:フォロワーコード再起動】
日比野結衣が叫ぶ。
「誰かが外部からゲームに介入してる! これ、公式イベントじゃない!」
御影慎が顔を上げた。
「フォロワーが、また“盤面”を変えようとしている――!」
ルーレットが暴走し、数字が渦を巻く。
プレイヤーたちは光の奔流に包まれ、ひとりずつ別々の場所へ転送された。
レオンの実況が重なる。
「信頼も、運も、そして過去さえも――混線する!
次回、“分断フィールド・北緯41度”。函館が、試練の迷宮と化す!」
(第1章第31話 了)




