【第1章第28話 沈黙の運転手】
佐渡発のフェリーが、再び新潟港へと戻った。
朝霧の中、挑戦者たちは無言でバスに乗り込む。目的地は秋田。だが、運転席の人物は帽子を深くかぶり、顔が見えない。
MC橘レオンの声が響く。
「次のミッション“沈黙の運転手”。プレイヤーは、このバスの“正体”を見抜かなければなりません!」
車内の空気が張り詰める。
佐久間悠真が観察しながら言う。
「GPS信号は途絶、経路も表示されていない。運転手AI説もあるけど……」
葉山玲奈が首を振った。
「違う、あの人……息をしてる。人間の“リズム”がある」
唐沢陽介が笑う。
「つまり、誰かの差し金ってこと? またフォロワーの仕業?」
千堂葵が前方を睨む。
「この静けさ、何か仕掛けてる顔よ。運転手を止めたらイベントが動く――そんな気がする」
日比野結衣はノートPCを開き、通信ログを解析。
「やっぱり。バスのシステムに“監視者タグ”が埋め込まれてる。発信元は……京都」
「京都? もう通り過ぎたはずだろ」神原翔が眉をひそめる。
「つまり、誰かが“過去”からこのバスを操作してる」
その瞬間、車体が急停車した。
窓の外、雪原の真ん中に立つ一人の人影。
――霧生ナオ。
「彼が……運転手を操ってる?」桐谷美羽が呟く。
霧生は口を開かず、ただバスを指差した。
すると、行き先表示が切り替わる。
【目的地:記憶再生ルート】
御堂エマの声が重なる。
「プレイヤーの皆さん、このルートでは“過去の選択”が再現されます。あなたが一度でも裏切った相手、その記録が再生されます!」
車内の空気が一変した。
モニターに映し出される、これまでの行動ログ――
嘘、迷い、そして“信頼スコア”の変化。
唐沢が叫ぶ。
「おい、これって全部放送されてんのか!? 全国に!?」
エマが小さく笑う。
「人生のゲームは、常に観られているのです」
静寂。運転席の男がゆっくりと帽子を取った。
そこに現れたのは、もう一人の“御影慎”。
同じ顔、同じ声。
「……僕は、過去に置き去りにされた選択の影だ」
バスが再び動き出す。雪をかき分けながら、真っ白な道を北へ。
実況レオンの締めの声。
「次なる目的地、秋田! 過去を乗せたバスはどこへ向かうのか――次回、“記憶の分岐点”、北の街で真実が明かされる!」
(第1章第28話 了)




