【第1章第24話 北へ翔ぶ列車、金沢ルートの罠】
京都駅。夜行の気配を孕む構内に、十人の挑戦者が再び集合していた。
MC橘レオンの声が響く。
「さあ、全国予選は今前半後半戦! 本日のステージは――“北上ルート・金沢経由”。ここから先、列車ダイスの結果で進路が決まる!」
ルーレットが回る音。
最初に出た目は「急行」。神原翔がわずかに口角を上げた。
「ロジック的に、急行なら富山経由が最適だ。時刻表から逆算して次の難問駅に間に合う」
「また理屈ばっかり~」と岩永蓮が笑う。軽やかにスーツケースを転がし、改札を駆け抜けた。
列車が北陸本線を進む。窓外に映る冬の日本海。
葉山玲奈は車窓に指で文字をなぞるように言った。
「“波”って、心が揺れる音がするね。ゲームの盤面が動いてる感じ」
佐久間悠真が苦笑する。
「詩的すぎて解答にならないよ、玲奈さん。次のチェックポイント、新湊の“謎の橋”問題、ちゃんと押さえてる?」
しかしそこへ、サブMC御堂エマの声が割り込む。
「速報! 本日限定イベント“ワンダーボンビー・リターンズ”発動です!」
列車の電光掲示が赤く点滅する。
【対象:唐沢陽介 運行ミッション『資金逆転クイズ』】
唐沢が顔を青くし、慌ててタブレットを取り出した。
「マジかよ……クイズで資金半減とか、確率的に悪夢!」
彼の焦りに、千堂葵が笑みを浮かべて肩を叩く。
「運の神様には好かれてるんでしょ? 大丈夫、外れても誰かがフォローするから」
金沢駅到着。観光客で賑わう鼓門の前、次のボードが現れる。
【“加賀百万石カードバトル” 選択肢:宿泊・進行・取引】
神原が即答する。「取引。情報優先だ」
だが日比野結衣が首を横に振る。
「今は動くより、休むべきタイミング。AI的予測では“停滞フェイズ”が来る」
意見が割れ、空気が張り詰めた。
そんな中、桐谷美羽が笑顔で割って入る。
「じゃあ、私が決める! “宿泊”に一票! だって、旅は楽しんだ者勝ちでしょ!」
拍手が起こり、対立は一瞬にして霧散する。
そして、その宿泊地――金沢の夜には、まだ知られざる“亡霊ミッション”が潜んでいた。
実況レオンの締めの声。
「波乱の北上ルート、第一夜! 誰がゴーストの影を見抜くのか――次回、“消えた加賀宿の影”!」
(第1章第24話 了)




