第1章第21話 岡山編 ― 橋と風と交錯する選択 ―
山陽新幹線の車窓に、瀬戸内の穏やかな海が広がっていた。
岡山駅に降り立ったのは、神原翔、葉山玲奈、そして岩永蓮。三人はそれぞれ別ルートでここに辿り着いたが、偶然—or必然的に—再会を果たす。
「おいおい、ここでまた会うとはな!」蓮が笑って手を振る。
翔は苦笑いしながらも、駅の構内マップを眺める。「岡山は中継点だ。複数ルートが交錯する。つまり――運命の分岐点だ」
その言葉に、玲奈が頷いた。「風が変わる匂いがする。ここ、きっと何かあるね」
駅前では、旅番組のような実況音声が流れていた。
《次の目的地は倉敷美観地区! 伝統と文化の街で、あなたの“人生アクション”を引き寄せましょう!》
三人は路面電車に乗り込み、美観地区へ。
白壁の町並み、静かな運河、そして観光客の笑い声。どこか現実よりも鮮やかに見えるこの街で、突然イベント通知が鳴った。
《選択イベント:橋の上で出会う運命。あなたは“渡る”か、“待つ”か?》
玲奈が先に足を踏み出す。「渡る、かな。人生は立ち止まってても進まんし」
翔は迷う。理屈ではなく“勘”を信じろ――どこかで聞いた声が脳裏をよぎる。
「……渡る」
二人が橋を渡りきった瞬間、風が強く吹き抜け、画面の色調が変わる。
向こう岸には、別ルートから来た日比野結衣と中村慎之介の姿があった。
「奇遇ですね」と慎之介が微笑む。
「合流、というより“再配置”かもしれませんね」と結衣が分析する。
そして背後から、あの不気味な笑い声が響いた。
「ハッハー! 風に任せて運命を混ぜてやったボン!」
ワンダーボンビーが現れ、橋の欄干に腰掛けて笑う。
「今夜は倉敷の宿で“運命シャッフルナイト”! 誰が誰と寝るかは運しだいボン!」
その場が一瞬でざわめく。誰が仲間で、誰がゴーストか――再び見えない戦いが始まろうとしていた。
翔は空を見上げた。
青い瀬戸の風が、次なる行き先を告げているようだった。




