第1章第20話 兵庫・神戸編 ― 港の記憶と偽りのメッセージ ―
大阪から西へ。JR快速列車が神戸の街へ滑り込む。
潮風が窓を撫で、車内に微かな海の匂いを残していく。
蓮はデッキに立ち、スマホを見つめていた。そこに届いた一通の匿名メッセージ――
《港の見える丘で、あの日の約束を果たそう》
差出人は不明。しかし、どこか既視感があった。
港町の朝。旧居留地を歩く参加者たちは“トレード&トラスト”という新イベントに挑んでいた。
互いの「運命カード」を交換し、協力か裏切りかを選ぶ――それが課題。
蓮は偶然、バリスタの玲奈と再会した。
「まさかまた会うとはね」
「関西、運命の渋滞中やで」と彼女が笑う。
二人は協力を選び、神戸港へ向かう。
その頃、南京町では翔と結衣が別チームとして潜入ミッションを進めていた。
“ゴースト推理”の対象者を特定する課題――
通りの賑わいの中、行動パターンから“偽りのメッセージ”の発信者を探す。
「表に出てる情報と裏の動きが違いすぎる……誰かが誘導してる」
翔の声に、結衣が低く返す。「なら、発信源はここ。港の電波塔ね」
夕暮れ、神戸の海が茜色に染まる。
蓮と玲奈は丘の上に辿り着いた。
そこには古びた望遠鏡と、見覚えのある影。
「やっと来たか」
振り返ったのは――鶴見和哉。
「この街は、再会のために設計されている。そう思わないか?」
蓮は笑い、「そんな大げさな人生設計、俺には向いてない」と返す。
その夜、神戸ポートタワーのライトアップが点灯した。
同じ頃、別ルートの参加者たちも港町に集結し始める。
「合流イベント発動」――運営の声が響き、
街全体が光と音に包まれる。
それぞれの運命が再び重なり合う音が、波間に消えていった。




