第1章第2話『北への出発 ― 氷と運命のルーレット ―』
東京駅から放たれた挑戦者たちは、まるで桜吹雪のように各方面へ散っていった。
北行きの新幹線ホームには、早くも数百人の列。冷気の中、春霞の空が淡く光る。
神原翔は切符を握りしめながら、時刻表を見上げた。
「札幌行き“ノーザン・ブリッジ号”……まるで試されてる気分だな」
隣では葉山玲奈がカップコーヒーをすする。「あんた、旅慣れてへん顔してんで?」
「……理屈で勝てると思ってたけど、どうも違うみたいやな」
自由席には岩永蓮の姿もあった。イヤホンを片耳に、リズムに合わせてノートPCを叩く。
「ルーレットは運、でも運も理屈で掴めるって思ってる。ダンスも人生も同じさ」
一方、南行きの車両には千堂葵と日比野結衣。
鹿児島を目指すチーム戦の一環で、地元の人に聞き込みしながら「人生アクション」ミッションに挑む。
「“見知らぬ町で他人を笑顔にできたらボーナス”……って、これ何の修行?」
「人生のゲームにマニュアルはないのよ」葵が微笑む。
列車の車窓が北へ流れ、函館、そして札幌へ。
その途中、運命のサイコロイベントがアナウンスされる。
“あなたの行先を、ルーレットで決めます”
車内が一斉にざわついた。
スクリーンに名前が次々と映る。
神原翔、岩永蓮、葉山玲奈……そして見知らぬ名も混ざる。
「立花悠人」「小坂みなと」「遠藤マリア」――彼らの顔にも決意の影。
「行先変更、旭川行き!」車掌が叫ぶ。
ルーレットに翻弄される運命の旅路が、再び動き出した。
だがその後方、誰も気づかぬ車両の隅。
ボロスーツ姿の“ワンダーボンビー”がニヤリと笑う。
「フフフ、幸運と不運は紙一重。今夜の宿が、君らの運命を決めるボン♪」
北への旅は、まだ序章にすぎなかった――。




