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第1章第16話「風舞う金沢、幻影の鼓門」

北陸新幹線の窓から、金沢の街並みがゆっくりと姿を現した。

雨の名残を残す曇天、その中に朱色の鼓門がそびえ立つ。

その瞬間、駅に降り立った数十名の挑戦者たちが一斉に歓声を上げた。


「ここが“芸術と幻影のステージ”か……」

佐久間悠真が地図を開くと、隣で葉山玲奈が小さく笑った。

「クイズだけやあらへん、今回は“記憶と観察”の勝負やで」


広場には特設モニターが設置され、司会の橘レオンが実況を始めた。

「ようこそ、金沢ラウンドへ! この地では“幻影アート推理”を開催します!」

画面に映し出されたのは、加賀友禅や金箔細工、21世紀美術館のモチーフ。

そのどれかに隠された“偽の作品”を見破るというルール。


挑戦者たちは街中へ散開した。

兼六園へ向かう者、ひがし茶屋街の路地を巡る者、近江町市場で情報を交わす者――

彼らはまるでひとつの大きな物語を紡ぐ糸のように、それぞれの方向へ歩き出す。


岩永蓮は踊るようにカメラを構え、

「直感で動けば、芸術も勝負も同じ!」と叫びながら市場を駆け抜けた。

その姿を見送る御影慎は、冷静にスマホを操作していた。

「データ上では、このエリアに二つの“幻”がある……どちらが真実か」


一方、鼓門の影で、中村慎之介がふと足を止めた。

観光客に紛れて立つ一人の女性が、なぜか霧のように薄れて見えたのだ。

――“召喚”の兆候。


「おい、中村さん、どうした?」と唐沢陽介が声をかける。

「いや……今、誰かが消えたような気がしてな」

「気のせいじゃねぇか? 移動中にそんな演出ありかよ!」

「人生のゲームに“気のせい”なんてあると思うか?」


その数分後、広場のモニターに速報が映る。

《新規挑戦者が現れました》

群衆がざわめく。

誰かが消え、誰かが呼ばれた――その境界は誰にもわからない。


日比野結衣はメモを取りながらつぶやいた。

「幻影アートって、つまり“存在の上書き”……ね。運営、何を仕込んでるのかしら」

「考えるより、見極めることやな」と千堂葵が答える。

二人の背後で、桐谷美羽が風に揺れるポスターを見上げていた。

そこにはこう書かれていた。


――“この地で真を見極めた者のみ、北陸を越えアジアへの扉へ進める”。


鼓門を吹き抜ける風が、どこか遠くへ誘うように鳴った。

そして、挑戦者たちの足音が再び金沢の石畳を震わせていった。

それぞれの“人生アクション”が、また新しい運命を動かし始めていた――。

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