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第1章 第15話 「交差する旅路 ― 京の風が運ぶ再会 ―」

春の夕暮れ、京都・東山の坂道を包む柔らかな橙が、参道を歩く旅人たちの影を長く伸ばしていた。

清水坂には全国から集まった挑戦者の姿がちらほら見える。誰もが疲れと興奮を顔に宿しながら、次なる行き先を探していた。


神原翔は坂の途中で立ち止まり、地図アプリを確認する。

「……この時間帯、宿も混んでるな。理論的に考えれば、ここで一泊が最適だが」

後ろから声が飛んだ。

「理屈もいいけど、夕日がもったいないよ!」

振り返ると、笑顔で手を振る桐谷美羽。彼女の隣にはダンサーの岩永蓮がいた。

別ルートを辿っていた二人が、まさか京都で再会するとは思いもしなかった。


「お前ら……西日本ルートじゃなかったのか?」

「フェリーが運休でさ、急きょ内陸ルートに変更。そしたらこっちに吸い寄せられた感じ?」

蓮が苦笑しながら肩をすくめる。

同じタイミングで、別方向からも声が重なった。

「ここで合流とは、偶然以上ね。」

千堂葵と葉山玲奈。中部ルートを抜けてきた二人も姿を現した。


清水寺の境内では、ちょうど“人生アクション”のステージが始まっていた。

挑戦内容は――「縁の糸を結べ」。

見知らぬ参加者同士が、赤い糸を結んで願い札を奉納するというもの。

成功すれば旅の運気上昇、失敗すればボーナスポイントがリセットされる。

恋愛でも友情でも、結ぶ“縁”の意味は自由らしい。


「……まるで人狼の推理みたいだな。誰と結ぶかで、運命が変わる」

神原が呟くと、玲奈が微笑む。「違うよ。これは“生き方”の推理。人を見る目、試されてるんや」

その会話を聞いていた蓮が、糸を二本手に取る。「じゃあ、ダンスのリズムで縁を繋ぐか!」

彼の明るさに引きずられ、会場には笑いが広がった。


そのとき――人混みの向こうに、見覚えのない影が立っていた。

古びた帽子を被った“ワンダーボンビー”。

風鈴の音に紛れて、不気味な囁きが響く。

「結ぶも断つも、運次第。どんな縁も、巡ればまた逢うボン♪」


次の瞬間、会場を包む風が一変した。

神原たちの視界に、ほんの一瞬だけ、別の街――金沢の灯が映る。

「これ……次の目的地、か?」

玲奈が息を呑む。京都の夕日が沈みきると同時に、スクリーンに次の指令が表示された。


《次なる舞台:北陸・金沢。選ばれし者、列車に乗り遅れるな。》


京都で再び交わった彼らの旅路は、再びそれぞれの方向へと分かれていく。

――けれど、誰も知らない。

この“偶然の再会”が、後に訪れる運命の伏線になることを。

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