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第1章第14話 京都編 ― 千年の迷宮と記憶の選択 ―

列車が京都駅に滑り込むと、静寂と華やかさが同時に降りてきた。

 大阪での喧騒を抜けた挑戦者たちは、古都の空気に一瞬だけ気を緩めた。

 しかし、アナウンスが響く――「京都ステージ、特別ルール発動。“過去と現在の選択”」

 挑戦者は二手に分かれる。観光ルートを選ぶか、歴史迷宮ルートを選ぶか。

 神原翔は迷わず後者を選んだ。「データと構造で勝負できる方がいい」

 葉山玲奈は笑って肩をすくめる。「理屈もええけど、京都は“心”で歩くもんやで?」

 伏見稲荷大社の千本鳥居。翔は鳥居をくぐるたびに不思議な既視感を覚えた。朱の連なりの中、過去の記憶が微かに反射する。

 その一方、嵐山ルートを選んだ岩永蓮と桐谷美羽は、観光客に混じりながら竹林を進む。「なんか、風がしゃべってる気がするな」蓮がつぶやくと、美羽は笑って答える。「それ、きっと“次の自分”の声やね」

 チェックポイントは三条の古い茶屋。茶屋の女将が微笑み、巻物を差し出した。

 「あなたが選んだ道は、誰かの未練を背負う道。迷わず進めたなら、心は一歩強くなる」

 その言葉と同時に、“ゴースト推理”の文字が浮かび上がる。

 プレイヤーは各自、誰かの“記憶の断片”を受け取る。誰の記憶なのか、なぜ残されたのか――その真実を見抜くことが次の通過条件だった。

 千堂葵は看護師としての感覚で、その断片を見つめる。「これは……悲しみを見せてくるタイプね」

 一方、唐沢陽介は大学生らしいゲーム脳で考える。「これ、心理テストに近いんじゃね?」

 それぞれが異なる視点で答えを導き出す中、神原翔だけは立ち止まった。

 巻物の裏には、淡く浮かぶ桜の印。そして、小さく刻まれた英数字――「QZ-014」。

 彼の胸に、一瞬だけ“誰かの視線”が走った気がした。

 その夜、清水寺の舞台で打ち上がる花火。

 参加者たちは笑いながら次の目的地を選んだ。だが、神原だけが空を見上げ、つぶやいた。

 「このゲーム、単なる人生の旅じゃない……何かを“見せよう”としてる」

 彼の足元に、風で転がる巻物が一つ。

 開かれた文字は、次の目的地――「金沢」。

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