第1章第12話 京都編 ― 千年の選択 ―
北陸から南へ――金沢を出発した参加者たちは、特急「サンダーバード」で京都駅へ向かっていた。
車窓を流れる琵琶湖の青が眩しい。
「見て見て! まるで鏡みたいや!」葉山玲奈が窓に張り付く。
「落ち着け、まだゲーム始まってもない」神原翔は静かにノートを閉じた。
京都駅に着くと、再びMC橘レオンの声が響く。
「次なるステージは“千年の選択”。あなたの“人生観”が試される京都ラウンドです!」
今回はチーム戦。
残り200名ぐらいが、くじ引きで5人ずつのグループに分かれた。
舞台は清水寺、伏見稲荷、嵐山、祇園、二条城――それぞれに設けられた“人生分岐ステージ”を回り、
最もバランスよく「知」「徳」「運」「縁」「勇」の五徳ポイントを集めたチームが勝利する。
葵のチームは伏見稲荷へ。
千本鳥居の朱が朝日に染まり、参加者たちはその幻想的な風景に息を呑む。
「ここ、願い事を書いて通るだけやと思ってたけど……」美羽が呟く。
すると現れたのは“ワンダーボンビー”、赤い千社札を手にしてニヤリ。
「ここは“選択の道”ボン♪ 一度進んだら戻れないボン!」
分岐ルートは二つ。上り坂は“挑戦”、下り坂は“安定”。
「どっちを選ぶかで未来が変わる」慎が腕を組む。
葵は迷わず上り坂を選んだ。
「看護師してるとね、しんどい道のほうが得るもの多いって知ってるの」
その言葉にチーム全員がついていく。
一方、祇園を訪れた翔たちのチームは別の“心理戦”に挑んでいた。
伝統茶屋を貸し切ったセットで、全員が「自分が信じる未来」をテーマにディベートを行う。
「この旅の目的は、単なるゲームじゃない。人の生き方を可視化してる」翔の言葉に観客席が静まる。
唐沢陽介が笑って返す。「理屈じゃなく、楽しんだもん勝ちだろ?」
「けど、誰かが笑ってる裏で誰かが脱落するんだよ」
淡々とした翔の声が、茶室に響いた。
夕暮れ、嵐山の渡月橋ではボーナスイベントが開催。
川面に浮かぶ灯籠に“自分の迷い”を書き流す。
玲奈はそっとペンを取って書いた。
《本気で笑える仲間を信じたい》
灯籠が静かに流れ、星がまたたく。
夜、ホテルグランヴィア京都のホールで結果発表。
総合1位は“チーム千本”。
「次のステージ、いざ大阪へ!」とレオンが叫び、拍手が湧く。
だがその一角で、モブ参加者・大林慎治が静かにつぶやいた。
「この旅……何か、見えない力に導かれてる気がするな」
京都タワーが夜空に輝き、次の目的地を照らしていた。




