三十 同級生と緑風祭
今日は体育祭。別名、緑風祭。快晴で絶好の運動日和。
中間テストでなまった身体を戻す機会だ。個人的には運動は得意ではないが身体を動かすのは好きだ。
「おはよう! 麻胡!」
バシッと背中を叩かれる。
後ろを見ると深澄がいた。
「おはよう、深澄」
「あれ、麻胡元気ないわね。もう緑風祭当日よ。元気出るようにもう一度気合いを入れてあげようか?」
中庭で話をしてから深澄が気軽に話しかけてくれるようになった。
それに雰囲気も明るくなった気がする。前よりもとっつきやすい。
っていうか、背中を叩いたのは気合い入れのつもりだったのか。
「遠慮しとくよ。ほら、教室行こうぜ」
正門をくぐり、教室に向かう。
正門は緑風祭用に飾り付けがされていた。とてもいい感じの雰囲気だ。何を隠そう俺も手伝ったのである。
「おはっよー! 二人とも!!」
遠くから声がするので視線を向けると、日向がこちらに向かって走っていた。
いつも着ている丈の短い制服ではなく、学校指定の体操服だ。半袖にハーフパンツ。そして学年色がワンポイントで入っている。
「おはよう、日向」
「おはよ、ひな。早いのね!」
「まあね〜! 私緑風祭実行委員だし!」
ドヤ顔を披露する日向。
緑風祭実行委員は早めに来て準備をしているのだ。
「アサアサー? そんなに余裕そうでいいの? 勝負忘れてないよね?」
「順位で勝負するってやつ? もちろん覚えているよ」
「勝負?」
深澄が不思議そうな顔をしたので説明する。
緑風祭の個人参加の種目で順位を争い、平均で一番高い順位の人が勝ち。純平を入れて日向と三人で約束したのだ。
「ミッスーも参加するー?」
「んー私は今回はいいかな」
「まじ?」
思わず口に出る。
「なによ、麻胡。文句あんの?」
深澄が睨みつけてきた。怖。
「いや、てっきり深澄は勝負事にのってくると思ったから意外だった」
「……昔の私だったらね。今はそう、ちょっと違うのよ」
少し煮え切らない態度の深澄。なにか心境の変化でもあったのだろうか。
最近の深澄は今までと雰囲気が違う。
以前はあったピリピリした雰囲気が柔らかくなったし、いい変化なのかもしれない。
「ええー! ミッスー! 参加しよーよ! せっかくの祭りだよ? 緑風祭と書いて祭りだよ! 体育祭だよ! 祭りだよ! わっしょいわっしょい」
ところどころ意味がわからないがどうやら日向は深澄も一緒に勝負してほしそうだ。
「負けても罰ゲームないからさ! ね! ミッスー! ほら、少しだけ! 先っぽだけ! 先っぽだけでいいからさ!」
途中よくわからないことを言い出した日向の頭を叩く。
「いったーい!」
頭を抱えて座り込む日向。大袈裟だ。
「日向はそう言うけど、無理にとは言わないよ」
「そうね、いえ、せっかくなら参加するわ! 罰ゲームもないことだし、緑風祭もより楽しめそう」
「ミッスー! 決まりね!」
やったー!
と、ジャンプして跳ねる日向。
テンションが高い。
「じゃあじゃあ四人で勝負ね! ってもう時間! またね!」
深澄の返答を聞いて元気になった日向は、焦ったように走っていった。
きっと準備の途中に寄ってきたんだろう。
嵐のように来て風のように去っていった。
「……行こうか」
深澄と顔合わせて教室に向かう。
教室に着くと、すでに純平が登校していた。
「純平早いな」
「おす、麻胡。深澄も」
「おはよう、純平」
深澄は挨拶だけして離れた自席に向かう。
純平はそんな深澄を横目に見ながら、
「珍しいな、二人揃って登校だなんて」
「正門で会ってさ。あ、そこで日向にも会ったよ」
「日向? でも一緒にいなくね?」
「緑風祭委員だから準備しにいったよ。すでに体操服にも着替えてた」
「日向は緑風祭委員だったな。そうえば麻胡、勝負のこと覚えているか?」
日向と同じことを言う。
「もちろん。あ、深澄も参加するって」
「マジか。俄然やる気が出てきたな!」
屈伸運動する純平。
そうこう話しているうちに、担任が入ってきた。
いつもより短いホームルームを終えて、男女別に体操着に着替えるために別れる。




