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二十七 結果発表

 中間テストの結果は翌週には発表される。

 登校すると、順位表が張り出される掲示板にはすでに多くの人が集まっていた。

 人混みを抜け、順位表を見る。

 緊張が腹が痛い。

 

 下から上へと視線を向け、


「よし」


 自分の名前を発見した。

 今回も特待生制度は維持できそうだ。思わず安堵の息をつく。

 ちらっと他の名前も確認し、その場を離れた。








 放課後、俺は純平、日向、深澄たちと教室に残っていた。中間テストの結果発表会だ。


「さて、中間テストの結果発表をする!」


 純平が自分の手で机にドラムロールをする。

 テンション高いな。

 日向もノリを合わせてドラムロールをする。

 

 純平は答案用紙を取り出すと、机に広げた。

 

「じゃじゃん! 赤点はゼロ! つまり補習なし!」


 ひゃっほう!


 純平が歓喜の声をあげる。

 日向が口笛を吹く。

 

 緑川高校の赤点は三十点、もしくは平均点の以下だ。

 机に置かれたテストを見ると、確かに補習のボーダーラインを超えていた。


「英語に関してはめちゃくちゃギリギリだな。あと一問間違えていたら赤点だったぞ」


「最後の最後で勉強会でやった内容を思い出してさ、テスト終了直前で直したんだが、それが正解だったんだわ」


 ギリギリで生きている奴だ……。


「次は私の番だね! じゃーん!」


 日向が純平の答案用紙に自分の分を重ねる。

 ざっとテストを点数を見ると、純平のダブルスコアに近い差だ。

 

「ぐえ」


 純平がまるで潰されたカエルみたいな声を上げる。


「どしたの? サトジュン」


「いや、ついに日向の頭いい証拠をみてしまってショックだったわけ。マジで頭いいのな。日向」


「へへん! 今回のテストもギリギリ順位表に載ったし? サトジュン私に敬語使いなよ」


 伊野さんは順位表の一番下ではあるが今回も掲載されていた。


「なんでだよ!」


「じゃあ次はアサアサとミッスーの番だね」


「そうだな、ほら、見せろ二人とも。丸ばかりの答案用紙を見せろ!」


 純平が急かすので、深澄と二人、解答用紙を取り出し机に置く。


「麻胡、あんたの借りるわよ」


 深澄が俺の答案用紙を手に取り、一枚ずつ確認していく。


 ふむふむ、と頷きながら見られる。何か親に見られている気持ちだ。


「ありがと、麻胡」

 

 しばらく確認すると、答案用紙を机に戻した。

 その後、純平、日向が確認する。


「あれ、麻胡、ここ間違っているぞ?」


 純平が丸がついていた箇所を指す。

 

「マジか、どれ?」


「嘘、あっているわ」


 何がしたいんだこいつは。

 無言で純平の脇腹を殴る。


「いてっ。痛ったた。やめてくれ」


 やめない。


「痛! すまんすまん。丸ばかりでイタズラしたかっただけだ」


 引き続き純平を殴っていると、無言で答案用紙を見ていた日向が、


「見事二人は丸ばかりだね〜。さっすが! でも今回ばかりはミッスーが一位になると思ったんだけどなあ」


 答案用紙を片手に言う。


「私が迷った二択をことごとく正解していたからね。流石は麻胡、勝負はあんたの勝ちよ」


 深澄が手をあげて降参のポーズをする。

 最初から勝負していたつもりはないんだけどな……。


「ウチも二人に負けないぐらい勉強しなきゃ! そしてママに言ってピンク髪にするんだ!」


 頑張るぞ、と日向がガッツポーズをする。

 ピンク。流石にめちゃくちゃ目立つだろうなあ。


「って純平、勝負は覚えているか?」


「勝負?」


 純平がキョトンとした顔をする。

 こいつ、やっぱり覚えていなかったな。


「点数勝負。ほら、純平が俺の七割をとったら勝ちってやつ」


「ぐわああああ!」


 純平が頭を抱えて立ち上がる。


「え、なに?」


「きゃ!」


 深澄と日向が悲鳴を上げる。


「完璧に忘れてた! 補習避けることにしか頭になかった」


 純平はそう言うと、急いで自分のテストと俺のテストを見比べる。


「……俺の五科目負けか?」


「そう」


 ざっと計算したがそんなもんだ。


「ぐわ、飯五回分か!」


 再度頭を抱える純平。


「どういうことなの?」


 はてなマークを浮かべる深澄と日向に説明する。

 中間テストの点数勝負をしていたこと。科目ごとにそれぞれ七割を勝負のボーダーラインとしていたこと。負けた科目数相手にご飯を奢ること。


「へえーサトジュン無謀だね」


「向こう見ずね」


「ちっ。うるせーぞ、二人とも」


 純平が口を曲げる。

 

「飯五回は多いから、飲み物でいいよ」


「まじで?」


「マジ」


 流石に五回も飯を奢ってもらうのは気が引ける。


「麻胡様! この佐藤純平。どこまで火の中、水の中どこまでもついていきますぞ!」


 純平が(おど)けたように平伏する。


「うむ、よきにはからえ。我はココアを所望する」


「ははー!」


 純平は再度平伏すると、勢いよく教室から出ていった。


 その光景を見て、

 

「男子ってバカね」


 深澄が呟く。

 違う、バカなのは純平だけだ!


 





 




 生徒会の用事があっため、俺はみんなと別れて一人で校舎を歩いていた。

 用事はすぐに終わったので、手持ち無沙汰にぶらつく。

 特に今日はこれ以上用事がないため、校舎を見学してもいいかもしれない。転校した際は簡単にまわったが、その時は冬だ。春だとまた違った面が見えるかもしれない。

 と、目の前から人影が見える。


「おう、麻倉じゃないか。元気にしてたか?」

 

「……栗木先生。ご無沙汰しています」


 栗木先生だった。

 相変わらずすごい筋肉だ。服の下からでもわかるその筋肉は主張が激しい。首もまるで丸太ぐらい太い。

 流石元ラグビー日本代表だ。


「新しいクラスは慣れたか?」


 栗木先生が肩を回してくる。

 

 く、苦しい。


「はい、大丈夫です」


 腕から抜けそうとするか、抜け出せない。

 なんだこの筋肉(ちから)は。


「最近は生徒会をやっているそうじゃないか! 学生生活を楽しんでいて先生安心したぞ」


 栗木先生はそう笑いながら、どんどん締め付けてくる。

 潰れてしまう……!


「先生、く、苦しいです」


「おおっと、すまんすまん。嬉しくてつい、な」


 栗木先生が腕の力を緩めたのでなんとか抜け出す。

 もう少しで酸欠になるところだった。()()で殺されてしまったらたまらない。


「せ、先生力が強すぎですよ」


「がははは、引退した今でも毎日筋トレは欠かさないんだ」


 そう笑うと、ポージングをし始める栗木先生。

 違う、筋肉を褒めたわけじゃない!


「しかし、ついに部活、いや厳密には部活ではないが、麻倉が生徒会に所属してくれて先生は嬉しいぞぞ」


 転校当初、栗木先生は何か部活動を始めてみないかと、積極的に推奨してきたのだ。おそらく部活動を通して友達を作って欲しかったのだろう。残念ながらその誘いは断ったが。


「そうえば、生徒会長の冬月とは以前からの知り合いか?」


「どういうことです?」


「いやなに副会長を選ぶ際、事前に相談があってな。口ぶりから元から知り合いっぽい雰囲気だったが」


 そうえば栗木先生は生活指導と一緒に生徒会の顧問の一人だった。顧問と言っても緑川は生徒の自治に重きを置かれているから特にやることはないらしいが。


 しかし、やっぱり会長は俺のことを昔から知っていたのだろうか。ならいつ会ったのだろう。転校する前か?

 栗木先生にその時のことを詳しく聞きたかったが――


「まあそれはいいんだ。麻倉、順位表見たぞ、学年一位すごいな」


「ありがとうございます」


 聞くのはまた別の機会でいいか。


「なんとか特待生維持できそうです」


「そうか、麻倉は特待生だったな。がははは、先生と違って頭が良くて羨ましいぞ」


 豪快に笑う栗木先生。


「勉強ももちろんだが、学生にしかできないことにも大事にな」


 呼び止めて悪かったな、そう付け加えると栗木先生は去った。


 苦手ではあるけど、決して悪い人ではないし、嫌いにはないんだよなあ。

 

 

 


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