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二十六 先輩と中間テスト最終日②

 図書委員と会議は、生徒会は俺と会長、そして図書委員は、委員長である藤宮さんに、窓口担当の九条さん、そして他二人。

 

 テスト終わってのすぐの会議だが、特に何か問題は生じず順調に進んだ。これも進行役(ファシリテーター)である会長の力だろう。会議が始まる前に事前に議題(アジェンダ)を共有し、本日の会議の目的を皆んなに浸透させる。


 会議の内容は前回の振り返りから始まり、今は具体的な施策でなにをするかの議論をしていた。

 会長はホワイトボード前に立ち、議事録を書いている。


「――という形です。何か意見ある方はいますか?」


 会長が席に座っている一人一人の顔を見渡す。


 会長と目が合い、片手を上げる。

 

 今までは遠慮してしまい、発言できなかった。会長が生徒会側の意見を代表して言ってくれた。だがそのままではいけない。生徒会側のメイン担当なのだからいつも会長に甘えるのは違うだろう。

 

 前回の会議時に、次の議論内容を聞いてからずっと考えていたことだ。


「麻倉くん、どうぞ」


 少しだけ目を見開いた会長が指名する。


「皆さんご存知の通り、緑川高校の周りには四か所も図書館があります。それぞれ特徴があり――」


 純文学コーナーが豊富だったり、自習スペースが広かったり、DVDの貸し出しをしている図書館など。

 

 会長から以前聞いた内容を改めて言う。


「――その中で、どれとも被らないものにするというのは当初の案だと思います」


 その前提からどのような図書館の特徴にするべきなのか、議論しているのだ。

 ただその議論があまり進んでいない。

 それはなぜか。

 学校周囲の図書館に特徴を被らせないようにする、という方向性はあるが、それはあくまで特徴の除外のため、どのような図書館にするべきというビジョンが見当たらないのだ。


「緑川市には多くの図書館があります。学校近くはもちろん、駅近や河川敷近くにも多くあります。学校近くだけではなく、緑川市内の図書館を参考にするのはいかがでしょうか? 多くの図書館がいまだに潰れず同時に存在しているというのは何かしら理由があるはずです。そして、高校から遠いですし、参考にしても問題ないかと思います」


 仮に真似ても物理的な距離は遠い。なので似たような図書館になって人が分散することは避けられるだろう。


 緑川に戻ってきた当初、図書館の数、そしてそれぞれの大きさにとても驚いたのだ。普通は大きな図書館があっても数個だろう。緑川は二桁近くある。これは緑川の特徴だろう。


 …………。


 発言したあと、しばらく無音が続く。


 静寂が怖い。もしかして見当違いなことを言ってしまったのか?


 パチパチパチ。


 拍手する音が聞こえたので、目を向けると、藤宮さんが手を叩いていた。


「麻倉くん、ナイスアイデアだ」


 藤宮さんはそう言うと手を止め、


「何も近くの図書館と比較する必要はあるまい。人気の図書館を分析し、学校近くの図書館に被らないところを参考にすればいい。いい案だよ、麻倉くん」


「ありがとうございます」


 賛同してくれたようだ。緊張が少しとれ、身体から力が少し抜ける。


「麻倉くん、参考にするっていうことは具体的にどういうことなのかしら?」


 会長が続く。

 バレないよう、会議メンバーには背を向け、ウインクをしてきた。


 提案するからにはそこは考えているでしょ?


 そんなことを言われている気がする。


 深く頷き、会長のパスを受け取り、


「はい、具体的にはこの四箇所の図書館を周り、それぞれの特徴を分析する必要があるかと思います」


 そう言ってホワイトボードに書く。


「どうしてその四つなんだい?」

 

 藤宮さんが疑問を投げかける。

 頷き、右側の図書館から順に説明する。


「はい。一つ目の緑川中央図書館は、緑川で一番大きい図書館です。が、その他三つは、緑川中央図書館の徒歩圏内にも関わらず、大きく発展している図書館だからです」


「なるほど、私たちの図書館と同様な問題を抱えているのね」


 会長が頷く。


 九条さんを除いた、図書委員の二人は少し疑問顔だ。


 つまり、と藤宮さんが説明するように口を開く。


「私たちの図書館も近くに多くの図書館がある。先程麻倉くんが言ってくれたように徒歩圏内に四箇所だ。私たちの図書館は残念ながら利用客は少ないが、緑川中央図書館とその周囲の三つの図書館は、それぞれ近いにも関わらず、どこも人気があり、多くの利用客がいる。そしてそれを参考にするべき、ということだろう?」


 二人の図書委員は理解したように頷く。


「はい、そうです。緑川高校の図書館は、学校配下なので条件は異なりますが、参考にできるかと思います」


 各々考え込む。

 少し沈黙が支配したあと、会長が口火を切る。


「では多数決を取りましょう。麻倉くんの案に反対の方は挙手を」


「……」


 誰も手を挙げる人はいない。


「では念のため。賛成の方は挙手を」


 藤宮さん、九条さん、他二人の図書委員の生徒も手を挙げてくれた。


 よかった……。

 ほっと息を吐く。


「ではこの案で行きましょう。そして担当者なのだけど、発案者の麻倉くんと――」


 会長が藤宮さんにアイコンタクトを送る。

 藤宮さんは頷くと、


「残りは図書委員からだな。ふむ、私がやってもいいが――」


 思案する藤宮さん。


 あの、と九条さんが声を上げる。鈴のような綺麗な声が部屋に響く。


「私が担当してもいいですか? 緑川の図書館には詳しいですし、麻倉さんとは窓口同士なので円滑に進められるかと思います」


 藤宮さんは目を見開くと、


「もちろんだ。よし、図書委員側はエルセで決まりだ」


 会長がホワイトボードに、麻倉の文字の隣に九条さんを追加する。

 会長と俺が書いた文字が対比される。うん、会長の文字はいつ見ても綺麗だ。一方で俺の字は……。


「ては具体的な話をしましょう」


 会長が促し、どのように進めていくか、みんなで詳細をつめていく。





 


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