十四 会長とデート?
緑川駅から電車で揺れること約二十分。目的地である振宮駅で降りる。振宮駅はターミナル駅であり、大きなショッピングセンターも併設されている。
ショッピングセンターには映画館やカフェ、本屋など色々入っており、休日は買い物客でごった返す。
普段高校までは徒歩で通っていることもあり久しぶりの電車だった。土曜日の今日は、やはり電車内は混んでいてもう少し乗っていたら人酔いしていた気がする。
冬月会長と待ち合わせの場所は、改札を出るとすぐにあるオブジェだ。時計台を模したそれは、振宮駅の待ち合わせの定番スポットである。待ち合わせをしているだろう人が何人かいる。
手元の時間を確認すると、十五分前だった。少々早く着いてしまったけど遅れるよりはいいだろう。
何をして時間を潰そうか。
と思案していたところ、視線を感じて顔を上げる。
目の前には、我が高校の生徒会長がいた。見慣れた制服ではなく、白を基調にしたシックなオフィスカジュアルな服を身に纏っていた。はじめて会長の私服を見た。普段見ることのない会長の私服を見ることができるのは役得だろう。
「おはよう。麻倉くん。待たせちゃったみたいね」
「あ、冬月会長。おはようございます。いや今来たばかりです」
「……ふふふ」
冬月会長が頬に手を当てて微笑む。
「……? どうしました?」
「いえ、先程の会話がデートみたいなやり取りだなと思ってね。ちょっと面白かったの」
デ、デート?
考えないようにしていたのにそう言われると意識してしまう。会長もそう思っていたのだろうか。いやでも今日はただの買い出しだ。でも二人きりでもある。やはりデートなのだろうか。いや自意識過剰だ。会長が――
「ふふふ。冗談よ。そんな固まった顔しないで」
危ない。意識がどこかにタイムスリップしていた。
「え、固まってました?」
思わず顔を触る。柔らかい。
「うん。あとちょっと頬が赤いわね。大丈夫? 暑い? 電車混んでいた?」
そう会長は言うと顔を覗き込むように見てくる。
「っ……! そ、そうですね。電車は混んでました。やっぱり土曜日は混みますね」
赤い理由はそれではないが、とりあえず話を合わせる。
「そうね。少し休むために少し座りましょうか。それにもうしばらくで合流できると思うし」
会長はそう言って近くのベンチを指差す。
……合流?
とりあえず会長に促されるまま座る。二人とも席に座ると会長が口を開いた。
「麻倉くんは今日は緑川駅から?」
「あ、そうです。家が学校から歩いて十五分ぐらいにあるので」
「そうなの。それは朝とかは羨ましいわね」
「ですね。もし寝坊しても何とか間に合う距離です。会長はどこからですか?」
「私は、逢月よ」
逢月駅は、緑川駅の数駅隣だ。
「意外に近いですね。今日は電車ですか?」
「そうよ。……って電車以外に何があるの?」
「てっきり車の送迎かと」
「……麻倉くんの私に対する認識が気になるわね」
「会長は学校も車の送迎じゃないんですか?」
「……違います。なんでそんなイメージが付いているのよ……」
会長は口を尖らせる。
口を開こうとすると、
「ごめんー! 待ったー?」
声をかけられる。
その方向を見ると、澄川先輩がいた。
ん? 澄川先輩? なぜここに?
「麻倉くんと話していたし、全然大丈夫よ。それより大丈夫だった?」
「うん、なんかホームドアが閉まらないとかで、点検で遅くなっただけ! 余裕持って出たのに結果的に待たせちゃってごめんね!」
どうやら話を聞く限り、澄川先輩は事前に会長へ遅れる旨を連絡していたらしい。
……ということは、今日はそもそも二人ではなく三人での買い出し? いやそもそも何人か知らないな。
変に勘違いをしていた。
恥ずかしい。無駄に緊張していた自分が恥ずかしい。穴に入って永遠に篭りたい。
「麻倉くんもごめんね?」
「いえいえ! 無事着いてなによりです」
「よし、ではみんな揃ったので行きましょう」
会長の言葉とともに、三人で歩き出す。
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