十一 緑風祭事前準備
生徒会が管轄している多目的ルーム。
先日は図書委員会との会議が行われたが、今日は先生との会議が行われている。参加者は緑風祭を担当する先生数名と、冬月会長をはじめとする生徒会役員数名。会議の内容は緑風祭の運営についてだ。
「――以上のことを踏まえ、今年度の緑風祭の予算は記載の金額のご支援をいただきたいと考えております」
会長が事前に配布していた資料を用いながら説明する。
先生たちが資料に目を落とす。会長はしばらく様子を見て、
「なにかご不明な点などはありますでしょうか?」
その言葉を合図に先生たちが、順々に質問する。
「はい。その件に関しては――」
「――の劣化により、新しいものを導入したいと考えております。その想定予算としては――」
「おっしゃる通りです。そちらを留意したものがこちらの予算案です。具体的には――」
会長が先生からの質問に澱みなく答えていく。
しばらく会長と先生たちとの問答は続いた。質問がなくなったあとは、先生同士で話し合いが行われた。
しかしすぐに結論は出たようで、予算に関しては概ね提出したもので問題ないとのことだ。
が、最終承認は理事長、校長の承認が必要になるため、後日になるらしい。
予定していた議題もすべて話し終え、会長が最後を締め括り、会議は問題なく終わった。
先生たちが退出するのを見届け、生徒会役員が多目的ルームの片付けをし始める。資料の回収、座席の整理、プロジェクターの撤収作業など。諸々の片付けを終え、会長の解散の合図とともに、各々帰宅した。
退出が最後になったので、電気を消そうと多目的ルームを念のため確認すると、会長が残っていた。
会長は、会議で使用した発表資料になにやらメモ書きをしていた。
緑風祭の会議はもうすでに何度か開催されているが、そうえば、会長はいつも会議の後残っていた気がする。
どの会議も今日のように、先生から様々な要望・依頼があったが、会長は的確に対応し、生じた問題を解決していた。
また、その場で答えられないものは一度持ち帰り次回の会議で返答、解決していた。
以前までは漠然と有名な人、という印象だけ持っていたが、生徒会に入ってその印象は大幅に変わっていた。
こんなにすごい人は見たことがない。緑風祭をはじめとした学校側との折衝や案件によっては学外への交渉、生徒会メンバーからの相談事にものっている。
一つ年上というのが信じられない。来年自分が会長みたいになれているかと聞かれたら即答でありえないと答えるだろう。
「麻倉くん、どうかした?」
声をした方向を見ると、会長がこちらを向いていた。
どうやら無意識に会長を見ていたらしい。
「あ、いえ。会長はまだ帰らないのですか?」
「そうね、少しやりたいことがあって。それ終えてから帰る予定よ」
「そうなんですね。緑風祭関連ですか?」
「そう、今日指摘受けたことをまとめたくて。議事録もあるのだけど、その場の温度感とかは忘れてしまうから。可能な限り当日に振り返りたくて、ね」
会議の議事録は書記の仕事だ。会長が最終確認して学校に提出する。
「……あ、もしかして電気消そうしてくれたのかしら? ごめんなさい。私はまだ残るからそのままで大丈夫よ」
「了解です。……ちなみに何か手伝えることありますか? このあと特に予定もないので」
戦力になれると思わないがいつも一人頑張っている会長の力になれたらと思う。
「ありがとう。そうね……」
会長が手を顎に伸ばし、しばし思案する。
沈黙が場を支配した。
特に何か悪いことしたわけでもないのに何故か緊張する。
「……今のところはない、かな。ありがとう。気持ちだけいただくわね」
少し残念ではあるが、現状一人でも問題ないとのことだろう。いや、そもそも入ったばかりの俺は戦力になれないということかもしれない。
「出過ぎたことを言いました。もし何か手伝えることがあればいつでも言ってください」
会長の作業の邪魔をしないよう、廊下に向かう。
「……あ!」
会長が声を上げる。
振り向くと、会長は手を顎に伸ばした状態のままだった。
「……せっかくなら麻倉くんのお言葉に甘えようかしらね。一つお願いしてもいいかしら?」
「はい。俺にできることなら何でも大丈夫です」
「ありがとう。後ほど連絡するわね」
生徒会でのやり取りはおもに、ティートの生徒会グループチャットだ。そこで連絡をくれる形だろう。
これ以上会長の作業を引き留めてはいけないので、帰宅しよう。
「では会長、お先に失礼します」
「うん。また明日」
ちなみに、後日学校側からすぐに連絡があり、無事予算は最終承認されたとのことだった。
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