ザマァや婚約破棄がランキングを独占してる理由
ランキング見てたら婚約破棄ものやザマァが多いな〜と考えていたら思いついたコメディです。
私は佐々木あけび、現代人である。
ネット小説を漁るのが趣味で、とりあえず小説サイトを開きランキングを眺めるのが日課だ。
今日も今日とて自室でベッドに寝転び「小説家に俺はなる!」を見ている。
好きなジャンルは「異世界恋愛小説」、そのランキングは現在「婚約破棄もの」「ざまぁ」に埋め尽くされており嫌いではないが正直食傷気味である。
タイトル見てこれは大丈夫!と判断しても大体ザマァか婚約破棄もののパターンにも出くわす。
ほんと、侵食されていると言ってもよいだろうほどに婚約破棄ものとザマァものしかない。
そんなことがわかっているなら何故ランキングを漁るのかというと、ごくたまにその侵食をかいくぐり流行り物ではないにも関わらずランキングにのる猛者が現れるのだ。
私はその登場を今か今かと待ちわびているのである。
「でもよく考えたらシンデレラもザマァだし。マイナスからの下剋上物語って皆好きなわけだから、『自分の責任ではないけどマイナススタートになる婚約破棄』は良いスタートなんだなぁ」
海外のことは知らないがザマァ=復讐と捉えると色々昔話が思い浮かぶ。
そうなると、婚約破棄は流行りの物語ではあるが、昔から愛される王道ストーリーであるのかもしれない。
「ああ〜どうやったらザマァの呪縛から逃げられるのか」
私はうんざりしながらも指はスマホをスクロールしていた、その最後の行までスクロールした。その時であった。
カッと強い光がスマホから私の目をさした。
咄嗟に目をつぶるがまぶた越しにも眩い光がスマホ、いや部屋全体を照らしているのがわかる。
「目、目がー!目がー!!」
「そこのお嬢さん」
背筋がゾッとした。
知らない声が部屋からする、そして絶対私を呼んでいる。不審者か?私は一人暮らしだ、大変だ。
「私はインスピレーションの精霊です」
「は、はぁ」
とりあえず話をあわせた。
不審者なのだ、反論したりしたら何をされるかわかったもんじゃない。
「今、ランキングがザマァや婚約破棄に侵されているのは何を隠そう私の手柄です」
「ほう」
光が弱まってきた、目を開きたいが不審者に目を合わせたくないから開きたくない矛盾を抱えている。
だが開かねばなるまい。
見たら「泉の女神」みたいな人がいた。ヤバい人だ。
「私は昔からザマァが好きなのですよ、快感でしょう?いけ好かないやろうが不幸になるのは。自分が認められるのは。愛されるのは」
「やめろ、あけすけなことを言うんじゃない!」
それは結論であって、小説というのはそれまでの経緯を楽しむものなのだ。
いかに主人公が努力や知恵で成り上がるかを楽しむものであって、、、確かに嫌なやつが不幸になればカタルシスもあるがあんまり不幸すぎるとドン引きしてしまうし、、、
「しまった、つい反論を!」
「えぇ、えぇ、あなたの言う通りそういう楽しさもありますよね。だから好きなんですよ、私も」
「たまに読むと絶対面白いんだけど、それにしたって量が尋常じゃないよ。最近除外検索には必ず ザマァ と 婚約破棄 を入れるもん。精度低いからアテにならないけど。BLのほうがよっぽど色々あるわ」
「BLがジャンル豊かなのは今に始まったことではないので」
「たしかに」
あらやだ、この精霊さん気が合う。
何もしないで帰ってくれないかな。
「私はインスピレーションの精霊、、、人にインスピレーションを与えるのです。そして私は今ザマァや婚約破棄にハマっております」
「多分誰しも一度は通りますね、その道」
「ですから、ばらまきました」
「ほう?」
「私の好みの小説を書くよう、ありとあらゆる作家に!作家の卵に!インスピレーションをばらまいたのですよ!ザマァや婚約破棄のインスピレーションを!!」
「量が多すぎでしょ!」
これだけ、マジで言いたい。
「多ければ多いほど良いんですよ。ぶっちゃけザマァならなんでも面白いかって言ったらそうじゃないんで。母数を増やせば子数も増える。面白い作品も増えるってもんです」
「その面白い作品を探すのに増えた母数も読まなきゃならんのがいやなんだよ!!」
女神が「こいつわかってねぇな〜」みたいな仕草をした。むかつくな。。
「ランキングがあるじゃないですか。面白いなら上に上がるので。勝手に抽出してくれるので便利です」
「飽きとかこないの?」
「ぜんぜん〜」
なんかよくわからん女神が高笑いする。
何が面白いんだ、この女神。
私は、もうどうしたらいいのかわからなくなった。さっさと出て言ってほしい。
「そろそろ帰ってほしいんだけど」
「話したいこと話したのでもう帰りますよ」
「えぇ、、、素直じゃん。あ、そうだ、ひとつ聞きたいことがあるんだけど」
「なんでしょう?」
女神が首を傾げる。
この女神はザマァと婚約破棄にハマっていて、それを量産させている。そういう話だった。
「なら、なんで異世界転生も流行ってるの?嫌いじゃないけど」
「別な精霊の仕業ですね」
ーーーまた、スマホから眩い光が部屋中を照らした。