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女装家転生~女装令嬢、お嬢様学校に通う~  作者: 宮比岩斗
エピローグ

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清麗様とは性別ではなく生き様

 明華女学院を卒業してから二年の月日が流れた。


 私は男として都心の大学に進み、奈緒も同学に進学した。


 一人暮らし――隣には奈緒が住んでいるが――には慣れたもので前世の経験もあり、すぐに一人暮らしに最適化された空間作りができていた。些か洒落っ気に欠けるのは男子学生にありがちなのと、男子学生には不釣り合いな広い部屋に住めているのが、未だに違和感を拭えないが。


 女装は続けている。


 大学近くに住むため、身バレ防止のために基本は部屋の中でだが、車を持てる年齢になったのでたまに誰も知り合いがいない場所で女装ライフを満喫している。


 さて大学生にもなると将来の話が出てくる。


 父の会社を継ぐことになるのは既定路線だ。父はコングロマリットと呼ばれる他業種で構成されたグループ企業体のトップにあたる人物だ。その後継者となるため勉強の日々を送っている。しがない警察官だった私が何十万の社員を抱えると思うとお腹がキリキリする。数人の部下と食堂でワイワイしながら昼食を食べている程度の器だった私に何十万という数字は大き過ぎた。


 けれど弱音ばかり言ってられなかった。


 その地位につかねば、自由に使える権力、財力がなければ、できないことが多い。


 様々な事情で夢を追えない若者を救うには、こうでならなければ許されないという社会の風潮を変えるには、他業種が一つのグループとなって様々なアプローチを試せるコングロマリット企業は実に都合がいい。


 もしかすると、私を輪廻転生させてくださった閻魔大王の思し召しなのかもしれないと最近は考えている。


 私の適正を見抜き、多くの人々を救いつつ、自身も報われるように仕向けたのかもしれない、と。


 日々忙しいが、なんだかんだで阿呆な男子学生である。


 馬鹿をやって馬鹿を見つつ、見る阿呆より踊る阿呆がイケてる男子学生の証拠という頭の悪い風潮には全力で乗っかることにしている。


 今日は合コンだ。


 よくつるむゼミ仲間に合コンへの参加を頼まれた。男女二人が幹事なのだが、私と奈緒それぞれ参加してほしいと要望があったのだ。それが叶わなければ、お流れになる危機だという。その仲間が女性幹事を狙っているのを知っており、費用もそいつが出すと聞いたので、ただ酒を煽りがてら若人の恋を応援しに参加を決めた。


 会場は個人経営の居酒屋であった。


 暗い雰囲気の店内に、熱帯魚が泳ぐ水槽があり、個室もあって雰囲気の良い店だった。


 五対五の合コンらしいが、女性陣はまだ一人も到着していないようだ。


「参加メンバーに急遽変更あって少し遅れるみたい」と男性幹事が伝えると「どんな子が来るんだろう」と雑談を始めた。


 私のスマートフォンにも奈緒から連絡が来ており、覗いてみると「嵌められた。覚悟して」と短いメッセージが表示された。


 少しして女性陣が到着するとその意味が判明した。


 五人のうち二人は奈緒と女性幹事。残りの他三名が問題だった。


 明華女学院で見知った顔だったのだ。


 白鳥さん、笹原さん、星さんが現れたのだ。


 白鳥さんと笹原さんは女装をしていない私の顔を見て固まる。


 星さんは必死に笑いを堪えているのがわかるぐらいに顔が歪んでいた。


 間違いない。


 こいつが犯人だ。


 関係者が逮捕され、二年が経ち、警護される必要性がなくなって出歩けるようになったのだろう。出歩けるようになって、することがコレかと思うと呆れる。


 自己紹介でどう言い訳しようか考えていたら、幹事の挨拶前に白鳥さんが「ねえ! 君って三宮美月って人の兄妹だったりする?」とぶっこんで来た。


 奈緒から「上手いことやり過ごしてくれ」という願いが込められた視線を感じる。


「――双子の妹です。失礼ですがお知り合いでしょうか?」


 言われたまんま双子の兄の振りをした。


 赤の他人の振りは奈緒が同席している以上難しいと判断したからだったが、それならば親戚の一人にしておいた方が無難であったと口にしてから気づいた。


 それからの合コンは大変だった。


 白鳥さんは兄妹の話を根掘り葉掘り聞き出そうとするし、笹原さんは何故かイケボを引き出そうとするし、星さんはヒヤッとする質問を投げかけてくるし、奈緒はそのカバーでてんやわんや、実質四体一の合コンと一対四の合コンに分かれてしまうし、妹を見たいとの野郎どもの要望に白鳥さんがノリノリで卒業式後に撮ったプリクラを披露したり、挙句の果てに妹を紹介しろと野郎どもに迫られてしまった。


 こうして私の女装家人生は、兄と妹を演じ分ける必要が生まれてしまったことで新たな境地に辿り着くことになる。


 私の今生は嘘だらけで恥ばかりだ。


 けれど美しい生き様であることを切に願う。

これにて本作は完結となります。

前作『29歳独身OL小夜子の語り部日記』で毎日更新は大変だったから完結するまで書き溜めしてやろうと思っていたら文字量は三万ちょいしか違わないのに三倍近くかかってしまいました。

本作は元々同じく三ヶ月ちょいで終わる想定だったのでどうしてこうなったという感じですね。


本作の続編として大学生編、スピンオフとしてバドちゃんが明華女学院に入学する話、明華女学院の歴代清麗様の話など構想はありますが、そちらは一旦保留で別作品の更新をしていきたいと考えております。

本日アップしたので、もしよろしかったら、そちらも読んでみてください。

作品名は『妹、電脳世界の神になる〜転生して神に至る物語に巻き込まれた兄の話〜』です。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

面白かったと感じた方は感想・レビューをお願いします。

※面白かったの一言だけでも嬉しいです!


それでは63日間、お付き合いありがとうございました!

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