神宮寺レポート11
四月から続いた事件は俺の預かり知らないところで全てが終わった。
結局のところ、御子息が全て上手いこと事件を解決に導いた。
内通者を味方につけ、そこから逮捕につながる情報を引き出した。その内通者の特定も御子息の友人が持つ広い交友関係が力となった。
警察がやったことといえば警護と犯人確保ぐらいだ。
いやはや、何ヶ月もかけた結果がこれだ。
ま、結果だけを見れば大成功ともいえる。現場を知らない人からすれば拍手ものだ。年を跨がる前に大量検挙で解決。御子息が多少の怪我をする程度の事故は起きたものの、命を狙われていたことを考慮すれば目を瞑れる範囲。
しかもありがたいことに、御子息は俺らの協力なくしてこの結果はなかったとお偉い方々にリップサービスしてくれたおかげで、不甲斐ない成果しか挙げられなかった俺らにお咎めはなかった。
ほとんどが上手く片付いた。
一つ、残っている謎がある。
首謀者――いや書くと全ての因果が集約されてしまうからニュアンスが異なる。そもそも人を拉致誘拐なんて思いついても普通はやろうとしない。だが過激派エルフもとい、それらと結託した彼らは計画をした。彼らは計画にあたり、差出人不明の手紙が届いたと口を揃えている。そこには拉致誘拐をすることで、それを材料に土地を奪い返せると唆した輩の存在がいることは確認されている。
その手紙は一通だけであり、それ以後は確認されていない。
犯罪教唆をした輩の特定は難しいため、差出人の捜査は打ち切られた。
実行者を捕まえたから、一件落着ということにしたい上の思惑が見て取れる。
ゆえに、このレポートを書くことはもうないだろう。
だから、最後に思いの丈をここに書きたい。
御子息はよくできた人だ。
朗らかで話しやすい。その柔らかく明るい雰囲気に人は集まるだろう。
仕事もできる。実務はもちろん、それを人に教え、理解できる指示に落とし込める。
気遣いができる。みんなが幸せになれるように、骨を折ることを厭わない。
見た目が良い。ただただ見た目が良いのだ。それだけで人を魅了される。
おおよそ欠点という欠点がない人だ。
だから不気味だ。
俺がいえた口じゃないが、経験の少ない若者ってのはどこか理想と現実のチグハグさに苦しんだり、そのギャップが埋められていない言動が回見えたりする。
それがない。
何事も一度経験したかのように卒なくこなす。
自分の器から溢れるようなことはしない。
老成しているといえばそれだけだが、あれは若者の皮を被った老人だ。
だから。
俺は願う。
御子息が情熱を取り戻すことを。
それが許されるような生き方ができることを。
11章『気づけば年末』はこれにて終了です。
明日からは12章『クリスマスは子供のもの』です。
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