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女装家転生~女装令嬢、お嬢様学校に通う~  作者: 宮比岩斗
3章 シティ派引きこもり

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神宮寺レポート3

 ゴールデンウィークが明けた。


 ゴールデンウィーク中、御子息は引きこもりの治療とかで毎日登校していて忙しかったようだ。ゴールデンウィークが明けたら、その治療はひと段落ついたのか毎日楽しげに登校している。


 俺のゴールデンウィークは待機ばかりで何もなかった。


 このまま何もなく一年が過ぎたらなぁなんて淡い考えを持つぐらいには暇だった。ネットで馬券を購入して暇を潰すぐらいには暇だった。さすがにラジオで競馬実況を聞くことはなかったが、気付いたら月の収入の半分をするぐらいには散財していた。ゴールデンウィーク明けもこのままの状態が続くと全財産を競馬に注ぎ込みそうだななんて不安を抱えるぐらいだった。


 そんな不安を抱いたのが良くなかったらしく、ゴールデンウィーク明けに状況が動いた。


 件の組織が水面下で動きが活発化したらしい。


 幸い、明華女学院周辺に怪しげな人は見られないので実行に移してはいないのだろう。


 しかし、こうも早く転校先、しかも性別を偽っている人の行方がバレるとなると組織の情報力は想定以上のものと推測できる。


 俺はいち早く御子息の耳に入れるべきだと進言し、さらなる転校をすべきだと提案もした。


 先に耳に入れたのは御子息の方だ。


 御子息も女子高ではなく、自身の性別に合った学校に通いたいと考えての提案だった。


 しかし、御子息は「家族にはこのことを黙っておいて欲しい。転校するつもりはない」と言いきった。その目は真っ直ぐだった。決して女子に囲まれた生活で桃色体験ばかりして目の色を濁らせた輩にはできない強い意志が宿った目であった。


「しかし、危険があります」といった俺の意見を片手で制した御子息は告げる。


「情報の精査を最優先に。こちらの出方を見るための情報やもしれません」


 御子息はまるでこのようなことに慣れているかのような落ち着きようだった。巨大企業の跡継ぎとなるため、このような危険な状況に何度か身を置いたことがあるかもしれない。


 さすれば俺は、その意見を尊重することに決めた。


 意見を尊重しておけば、ワンチャン来月のクレジット決済で金が足りなくなった時にお金を借りられるとか、そういう不埒な考えがよぎった訳ではない。少しよぎったかもしれないが、節約してどうにか借りない努力はしようと思う。万が一のセーフティだ。


 お金を人質に取られたら人間なんでもやってしまうのは貨幣制度のバグだと思う今日この頃。

3章『シティ派引きこもり』はこれにて終了です。

明日からは4章『道は自分では選べない』です。


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