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異世界バトロワ ー天上の大罪ー  作者: 96tuki
鳳凰の翼
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「僕の勘に狂いはなかった」

 朝の日差しが微かに入った頃、アルは部屋の隅で大きく伸びをした。

「もう朝になっちゃった」

 そう言った後、真っ黒な目の周りを擦り、大きなため息をつく。美月と離れてからのこの三日間、彼はまともに眠れていなかった。彼の人生で培ってきた警戒心が存分に働くため、微かな物音でも目が覚めてしまっていた。美月といたときは傭兵時代と同じように、頼れる味方がいるという安心感から短い時間で熟睡出来ていたが、今は量も質も最悪になっている。

 アルは目覚めてすぐに着替えて、食事をせずに泊まっている宿から飛び出した。昨日一昨日と同じように、転移者の情報のあった場所近辺へと足早に向かう。魔女の格好と大きな杖という身体情報を目印に、木々をかき分けて調査する。

「もうどこかに行ったのかな」

 だが成果は全くなかった。本人が見つからないならまだしも、炎を操る男と戦闘をしていたという痕跡すらも見当たらない。痕跡だけでも見つかれば今後も調査を続行できるが、それすらないのでは行動意義が欠けてくる。それに、今後「(アルファ)」のような組織が強大な壁として立ちはだかってくるだろう。それを考えると、そういった組織よりも早く接触しておきたい。それにこの転移者が見た目通り魔法には長けているのなら、大人数と戦うときに大きな戦力になる。なので、もし存在するのであれば存在するであろう他の組織よりも早く接触する必要があった。

「ここまで何にもないんじゃあ、逆に疑えてくるよ」

 だが、アルはあまりの痕跡のなさから、意図的に隠された可能性を考え始めた。それに、探している人物は恐らく魔法使いだ。何も攻撃魔法だけしか使えないなんてことはない。幻覚の一つや二つ、簡単に見せられるだろう。

「ま、ここまで考えていなかったら完全に骨折り損だけど、僕の勘はいるって言ってるんだよね」

 そう言って止まっていた足を動かし、今度は違和感のある場所を探し始めた。

 暫くして、ある一箇所でその違和感、いや完全におかしい点を発見する。

「太い木のはずなのに、ちょっと上は風が通ってる。」

 一番最初に調査した場所に、その違和感は存在した。目の前にあるのは、他の木と同じくらいの高さの木だった。だがこの場所だけやけに密集していて、さらには幹の太さが他と比べて段違いに太い。下部では前から来る風が一切ないのに、木に遮られている部分では風が音を立てて通り過ぎている。昨日まではほぼ無風に近い状態だったので、アルはこの違和感に気づけなかったのだ。

 アルがその木に触れると、辺り一面の景色が割れる。そして、恐らく本当の景色が広がった。

 大木は小さな小屋に変わり、木々のあった場所は焼けこげた平野になった。

「やっぱり。僕の勘に狂いはなかった」

 アルは律儀に小屋の扉にノックをする。すると、大きな足音が聞こえ、ドアノブがゆっくりと回る。ほんのわずかに開いた隙間から、こちらを覗く目が見える。

「……よく気付きましたね。何か御用で?」

「うん、ちょっとね。貴方とお話がしたいんだ」

「では、ご用件をどうぞ」

「え、中に入れてくれないの?」

「当たり前です。悪質な訪問販売や宗教勧誘の可能性もあるんですから、見知らぬ人を簡単に室内に入れるなんて警戒心にかけてますよ」

「でもここ異世界だから、まず命の危険を考えた方がいいと思うんだけど」

「ご安心を。何か感じたらすぐにドアごと貴方を吹き飛ばしますので」

「なら安心だね。僕の要件は、どちらかというとお知らせかな。僕この前転移者で作られた組織と遭遇して勧誘されたんだよね。で、断った瞬間襲いかかってきたんだ。今日来たのはそのお知らせだよ」

「……わざわざありがとうございます。おかげで寿命が伸びた気がします」

「まだ気が早いんじゃない、魔女さん」

「……ただのくたびれたOLですよ。それで、話は終わりですか? ……あの〜?」

 急に反応のなくなったアルに、女性は困惑する。先程までテンポよく返答していたのもあって、それが生きている人間とは別の何かだと気づくまでに、アルはその小屋の中に侵入することに成功していた。

 背後からの音に女性は直ぐに振り向く。

「……どうやって入ったんですか?」

「窓、閉めた方がいいんじゃない?」

 アルは窓の方を指さして、笑顔を向けた。

「僕はアルハード。貴方は?」

「……冴島鏡花(さえじまきょうか)です」

 冴島鏡花は、警戒心をむき出しにしながらも名前を教えた。

「それにしても……」

 アルは冴島の姿を見つめる。黒い三角帽に、スタイルを強調する胸元の開いたドレス。スカートの部分には、側面に際どいスリットまで入っている。

「それでくたびれたOLは無理があるんじゃない?」

「好きでこんな格好してるわけじゃないの〜!」

 冴島は体を手で隠して、顔を真っ赤にしながら悲痛の叫びを上げた。

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