「俺と組んで損はない」
「俺と、国盗りをしよう」
そう言って、劉は手を差し出す。突然国盗りと言われた美月は理解することが出来ず、困惑したまま立ち尽くしていた。劉はそんな美月を見て自分の行動が少し急ぎ過ぎだったことに気付く。そして、すぐに説明を始めた。
「正確には国じゃないが、俺はある組織を乗っ取ろうと思っている。その組織は「数」お前も聞いたことあるだろ?」
「数」。美月にとって、聞くに新しい単語だ。流石に数時間前に聞いた言葉は忘れていなかった。
「俺は少し前、そこの幹部になった。そこでいろいろ活動していたんだが……少し思うことがあってな。このまま従ってるだけってのも面白くなくて、いっそのこと乗っ取ることにしたんだ。そう考えてすぐ、どこかの国と戦争を始めると来た。強力なスキルを持っているからと言って、数人で攻略できるほど甘い世界じゃないからな。本拠地の防衛が薄くなるのは目に見えてる。その上、俺は簡単にボスと接触出来る。ただ、俺一人じゃ勝てない。だから、お前に協力してほしいんだ」
「え、ムリ。今はそれどころじゃないんだよ」
一蹴である。しかし劉はそれで引き下がるような男ではなかった。
「なにかあったのか?」
美月は少し迷ったあと、別にいいか、という風に口を開いた。話が早く終わるならそれがベスト。しかし、今回に限ってはその考えが裏目に出る。
「なんか、ヴェルンって国がどっかと戦争するらしくてさ」
「ほう、それを止めたいと」
「そういう……わけかな」
「だったら尚更、俺の話に乗った方がいい。なんせ、「数」が戦争しようとしてる国こそがそのヴェルンなんだからな」
「……マジか」
「大マジだ。一言言わせてもらうとするならば……俺と組んで損はない」
自身に満ち溢れた表情で劉は言い切った。それは、第一印象が最悪で、到底信用に足るとは思えない人間から出る説得力ではなかった。
美月は情報を整理するために、少し思案する。
ヴェルン王国の戦争を止めることは単なる手段であって、目的は晴祥をガウス騎士団に入れること。
ヴェルン王国の戦争相手は「数」。なら、そこを潰せば戦争を起こす必要がなくなり、実質的に止めたことになる。ここで問題なのが、それが晴祥の実績になるか、信用になるのかということ。もしならなかったら、晴祥を連れて逃げることになる。今後も転移者の相手をすると考えたとき、ガウス騎士団に追われながらというのは大きな不利だ。そのため、晴祥には絶対的な実績を作ってもらってなんとしてでも入団してもらう必要がある。
暫くして、美月の頭で考えられる限りの最高の方法を思いついた。
「……いいぜ。だが、一つ条件がある」
「……言ってみろ」
先程とは打って変わった表情をする美月を見て、劉はこれから提示される条件を警戒する。
身構える劉を気にかけることなく、美月は言葉を続けた。
「やるなら戦争前だ。戦争が止まらないギリギリの被害を出して、ヴェルンが有利な状況を作る。欲を言えば、ボスを潰した情報が早く伝わって、俺が加勢できるくらい直前がいい」
「おや、それでいいのか?」
劉は意外、という反応を見せる。そして、これが先程少し言い淀んでいた理由だと気付いた。
重要なのは止めることではなく手段か。
「お前の頑張りによるが、出来なくはない」
劉は浮かべた笑みを絶やさず、また自信満々に言い切る。
美月は、差し出された手を力強く握った。
「交渉成立だ。よろしくな、同士」




