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異世界バトロワ ー天上の大罪ー  作者: 96tuki
鳳凰の翼
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「全部死ね」

「はあ〜。疲れた疲れた。あんなん本気出せば一日で終わるんだよ。さて、これであと二日はノアが来ることはないし、浮いた時間遊ぶか」

 赤髪の男は、肩をぐるぐる回しながら、自室に向かう。鼻歌まじりの軽快な足運びで、若干テンションが上がってるようだ。しかし、そんな彼の足が自室の前でピタッと止まった。見ると、部屋のドアによりかかり、不満げな顔でこちらを睨みつける少女がいた。

「……ミサカちゃん。なんでこんなところにいるの?」

「文句があるなら部屋にこいって、貴方が言ったんじゃないですか」

 ミサカは軽蔑の目を向けてため息をついた。男は彼女の理解しがたい行動に赤い髪を掻きむしった。

「あー……それじゃ、部屋上がる?」

「文句が言えるのならどこでも」

「それじゃあ入ろう。廊下でボロクソ言われたらメンタルがもたない。部屋の中なら防音加工してるからどれだけ言われても外にもれない」

「ボロクソに言われる覚悟はあるんですね」

 その言葉に若干の恐怖を覚えながら、男はドアを開いた。そしてミサカを部屋に上げて、入念に施錠と防音機能のチェックをした。

「? なにしてるんですか?」

「鍵閉めただけ。三日たったら来いっていっても、ノアは一日で来るからさ。俺あいつ嫌いだし、話したくないんだよ」

 敬意の全くない物言いに、ミサカは驚きながら少し尊敬するかのような声を上げた。

「よく最高神にそんなこと言えますね」

「俺は替えが効かないから、不敬くらいじゃ罰を受けないんだよね」

「自慢ですか?」

 男の発言が気に障ったのか、ミサカは男をキッと睨みつけた。

「もう文句出たの? 早すぎだよ」

「まだまだありますよ。まずですね……」

「あー! 俺今疲れてるから文句聞けないなー。膝枕でもしてくれない限り文句なんて聞く体力ないよー」

 男はちらっとミサカの方を見る。こうすれば引くと考えたのだろうか。それとも、ただ単に白くて柔らかそうな太ももを堪能したいだけなのか、どちっかは真偽不明だが、どう転んでも男に得のあることが起きるのは確実だ。まあ、無視して説教されたり、無言で居座られたりされる可能性もある。だが、その可能性に気づく前に起こったことによって、思考が停止した。

「いいですよ。こちらに」

 ベッドの上で正座をして、ミサカは太ももをぽんぽんと叩いた。それに男は吸い込まれるように頭を乗せる。

「ミサカちゃん、大丈夫? 悪魔とかに騙されたりしない?」

「やっといてそれ言うんですか……。まあありえませんよ。だって、私が悪魔なんですから」

 衝撃の告白に、部屋が静まり返る。聞こえるのはたった一つの心音だけ。それは太もものぬくもりを通して伝わってくる。当然、ミサカのものである。神に心臓はないが、悪魔にはある。悪魔は神よりもっと人間近い存在なのだ。

 黒い刃がベッドを貫く。男は知っていたと言わんばかりの反応の速さで、ドアの前へと避けた。

「あら、仕留めたと思ったのに。まあ次はないです。ドアに鍵をしたのが仇となりましたね」

「仇〜? この環境は、俺にとって最高だぜ」

 鋭い殺気が首筋を伝うが、それでも男は余裕の表情を崩さない。動じないということは、それだけで相手の思考を鈍らせる。だが、今回に関してはただ動じていないだけではなく、確実な策がある故の余裕だった。

 男は手を差し出してこう言う。

「……ミサカちゃん。俺と組まない?」



「全然燃えてねえなぁ? 不発かよ」

 志倉は美月の蹴りが一切効いていないような素振りを見せる。美月の仮説が正しければ、当然と言えるだろう。そして、志倉は美月と違ってレベルシステムの恩恵も受けている。こうなってくると、倒れている兵士たちを庇いながら戦うのは、二人がかりでも難しい。

 美月は炎に見舞われた森の方を見る。そこには確か、兵士たちと兵士たちを運んでくれたアルたちがいたはず。さっきの攻撃を避けられたのだろうか。森は焼け跡が広がっていて、確かに炎によって燃やされた痕跡があるのだが、炎がどこにも見当たらない。それどころか、アルたちまでいなくなっていた。

「大吟醸『芍薬星(しゃくやくぼし)』」

「うおっ!」

 目を離していた隙に大きな炎の玉が飛んできていた。先程確認した通りなぜか背後には兵士たちがいないため気兼ねなく避けることが出来る。流石に、この速度の玉に当たるわけがない。

 美月がスキルを発動しようとした瞬間、横から別の何かが飛んできて、反射的に掴んでしまう。掴んだのは何かの手首。見れば、志倉が近距離まで詰めてきていた。

「あっぶな……」

 志倉に気を取られて動きの止まった俺に、晴祥が怒鳴る。

「バカ! それが囮だ! 爆ぜるぞ、離れろ!」

「ダメだ。逃がさん」

 志倉は美月の手を振りほどくのではなく、逆に手首を掴み返してきた。

「悪いな。俺のスキルに許可はいらないんだ」

「は……」

 美月はポケットのキューブを上空にぶん投げ、志倉に掴まれたまま『神出鬼没な奇術師(アポート)』を発動する。そして上空に移動した瞬間、地面の炎の玉が爆発する。規模はそこまで大きくないが、爆発地点の地面が削り取られているように見えた。

「なんだコレ…!?」

「ああ、お前忘れてた」

 美月は志倉を下側に押し込み、そのまま地面に落下する。人の上だとしても、衝撃はかなりある。だがこれでも硬い地面よりマシだ。

 志倉の上に立っていると、下半身が熱くなってきた。これは……燃えている。

「ええ……!?」

 美月は急いで志倉から離れる。上に何もなくなった志倉は、ゆっくりと立ち上がった。全身が燃えているのに一切の反応を示さない。どころか、その前の落下よ衝撃すら気にもとめていない。

「大吟醸『炙り酒(あぶりざけ)』。煙の臭いで酒が進むんだ」

 炙る、というレベルではない燃え方をしているが、志倉は構わず酒を呑む。しかし飲んでも相変わらず燃えているため、酒を飲んだら回復するようなものではなさそうだ。だが、この異常なタフネスには、確実にこの酒が関わっている。

「もういいやめんどくせえ。全部死ね」

 酔いが回りかえって冷静になったのか、いや情緒がおかしくなったようで、志倉からの殺気が先程の比じゃないほど溢れ出ている。

 美月が一旦状況把握をしようとしたとき、背後の晴祥から嬉しい知らせが届いた。

「アルハードたちが兵士の避難を完了させた。これで心置きなくぶっ飛ばせるぞ、美月」

「……よしきた」

 美月は拳を合わせ、もう一度気合を入れ直すのだった。

 

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