「今日何回目だよ、これ……」
「とりあえず、現在地はっと……」
晴祥はキューブを取り出し、地図を表示させる。そこにはこの森全体と、自分達の現在地が記されていた。
「なんだその便利な機能」
「お前らもこれ出せ。一応両方仲間登録しておいた方が今後楽だ。一定時間近くにいるとならなくなるみたいだが、一回離れるとまた鳴り出すからな。あの音鬱陶しいんだよ」
「俺無理だぞ。なんか壊れてるし。ほら」
美月が電源をつけると、ERRORと赤く書かれた画面が表示される。
「なら仕方ねえか。おい、お前もとっとと出せ」
「指図されんのムカつく~」
そう言いながらもアルは晴祥を登録する。
「さて、行き先はゴーゼスタウンだろ? ここからだとどれくらいでつくかわかるか?」
「うーん、僕らのときは、ここから走って30分くらいだったよ。今の位置とは真反対のとこだから、走ってもその二倍はかかるんじゃないかな」
「このまままっすぐ行くってなると、この森の最深部を通らなきゃなんねーのか。……それはちょっとだるいな。南側に迂回して行こう」
「それが正解だと思うよ。だってそこ、ドラゴンいたし」
「え!?」
晴祥は驚きの声を上げ、美月は何か察するものがあったのか、渋い顔になる。
「お前、最初そこにいたのか」
「そうそう。だからドラゴンに追っかけられてたんだ」
「お前ら最初からそんな目にあってたのかよ。良く死ななかったな」
「まあなんとかな。大体こいつのおかげだけど」
「僕に感謝してよね」
「そもそもお前が俺に接触してこなけりゃ俺がピンチになるこたなかったんだよ」
「たられば言うなんて、男らしくないよ?」
「知るかそんなもん」
「じゃあたらればの意味、一から説明してあげよっか?」
「そういうことじゃ……っつ……」
美月が体に力を入れると、全身が痛みに襲われ、思わず顔が引きつる。手足に至っては未だに上手く動かせない状態で、筋肉が強張ったまま痺れているように震えていた。
「いくら美月が強くなってたとしても、その状態じゃ流石に僕が勝つよ。今日だけで二回も死にかけてるんだし、しばらくは安静にしてた方がいいよ」
「……回復したら覚えてろよ」
「僕が忘れるわけないじゃん」
「それ以上お前らの世界を広げるな。俺が嫉妬する」
「ナチュラルにキモいなお前」
「……それじゃあ行くか。俺達のルートはこっちだ」
「すまん、流石に言い過ぎた」
ガチ感のある間に、美月はすぐさま謝罪をする。
「お前が謝るなんて珍しいな」
「流石に今の間は怖かった」
「ははっ、まあ気にすんなよ。お前が当たり強いのは今に始まったことじゃない」
晴祥は軽く笑って適当に流し、ルートを進みだした。美月たちも黙ってそれについていく。
「……肩かそっか?」
しばらくして、歩みの遅い美月を見かねてアルは声をかける。
「いや、いい。こんくらいなら全然……」
「貸せ。いや、担げ。それが一番合理的だ」
「だってさ」
「いや、でも……」
意地でも拒否したい美月の声を遮り、晴祥は説得のような言葉ではないが、納得するような説明をする。
「変な意地を張るな。俺達だってまだダメージが抜けてないんだ、一番強いお前を少しでも回復させとかなきゃ、襲撃されたときどうにもなんねー。お前にもプライドがあるだろうが、ここは折れろ。お前の体調の方が大事だ」
「そこまで言われたら……ってうおっ!」
またしても美月の言葉が遮られ、アルに軽々と持ち上げられる。180㎝あるガタイの良い男が150㎝の華奢な少年に抱きかかえられてる図は、何事にも形容しがたいものだった。
「なんか……笑えるな」
「お前も覚えとけよ……」
「前も思ったけど、ミツキって結構軽いんだね」
「言うて80㎏あるんだけどな」
「それでも体格の割には軽いよ。僕は56㎏あるし」
「この細腕で!?」
「人はみかけによらないんだよ?」
「にしてもだろ」
こんな感じで、何度か休憩をはさみながらかなりのスローペースで森を進んでいると、前を行く晴祥の足が止まった。
「誰かいるね」
「ああ、俺が様子を見てくる。お前らはここで待ってろ」
そういって晴祥の気配が姿と共に消える。そしてその状態のまま進み、前方に現れた人影を注意深く観察する。目の前の人物は赤髪で、旅人のようなボロボロの服を着ていた。体のラインから、女であることが推測できる。細身の体に似合わない体験を携えている風貌から、恐らく転移者であることが見て取れた。
「まあ、殺すか」
晴祥は悩むことなくそのまま背後まで忍び寄り、左手を振りかぶる。その瞬間、女は振り返り、晴祥は彼女と目が合った。
「うわっ!!」
「なっ……」
女は驚きの声を上げると共に、担いでいた大剣を勢いよく振るった。晴祥の体はフルスイングに衝突し、そのまま大きく吹き飛ばされた。
「全く、いきなり殴りかかってくるなんて、正気とは思えないな」
木の枝を薙ぎ倒しながら、晴祥の体は少し浮かびながら吹き飛んでいく。木の葉に絡まっても止まる気配は見えず、降下したところで木の幹に衝突し、やっと動きを止めた。
「今日何回目だよ、これ……」
晴祥はそう呟いて気を失った。




