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異世界バトロワ ー天上の大罪ー  作者: 96tuki
暁の知らせ
33/91

「タダの連れだよ」

 忽然と現れた黒色の刃は、千春の背中を突き刺す。完全に虚をついたはずの攻撃は千春の体を貫通することは叶わず、背中で受け止められていた。

「逃げてなかったんだ。勘違いしちゃったじゃん……って、またいない。せこいことしてないで男らしく突っ込んできなよ」

 口を尖らせる千春を無視して晴祥は計画を立てる。晴祥のスキル『冥王の権利』。悪魔を従え、その悪魔の力を使うことが出来る。先の攻撃は悪魔の魔力を使い行ったものだ。この攻撃は射程を伸ばせば伸ばす程威力は下がり、魔力の消費量も増える。今の5m離れた位置から撃った攻撃では傷一つつかなかったが、恐らくゼロ距離で打ち込めばダメージ自体は入るだろう。ただ、それで仕留める、最低でも怯ませることが出来なかったときのことを考えると安易に近づけない。この5mというのは、攻撃しても反撃が届かず、千春が気づく前に姿を隠せられるギリギリのラインなのだ。

「まさかこんなに早く壁がくるとは……。ったく、他のやつらからも力借りねえとな」

 晴祥は黒色の刃で自分の手首を切り裂いた。なにもとち狂ったわけではない。これは、新たな悪魔の力を使うための準備なのだ。スキル『冥王の権利』は自由に悪魔の力を使えるように思えるが、実は違う。弱い悪魔ならこき使うことが出来るが、力の強い悪魔、自我を持っている悪魔には代償を払う必要がある。そして、呼び出す際には自分の血液が必要なのだ。

「代償は左手の爪全てだ」

 晴祥がそういうと左手の爪が親指から順に剥がれ、激痛が全身に奔る。その後、親指の爪があった場所から順に黒く染まっていく。これは、契約が成立した証である。

「中々いいじゃねえか。それじゃあ試しに、もっかい5mから!」

 左手から黒い爪が伸び、千春めがけて襲い掛かる。晴祥は先程とは異なり確かな手ごたえを感じたのだが、同時に一つのミスに気付いた。爪は確かに千春の腕に食い込み、ダメージを与えていた。しかし、爪は体から直接伸びたもの。つまり晴祥は、自ら反撃の機会を作ってしまったのだ。千春は腕に食い込んだ爪を掴み、思い切り引っ張る。

「まずっ……!」

「やっと見つけた。ってことで、ドン!」

 千春は晴祥の顔面を思いきり殴りつける。あれだけ喰らわんとしていた攻撃を喰らった晴祥の体は、二転、三転して木に衝突する。何とかガードは間に合ったものの、ダメージを大して減らせず、額からは血が流れていた。

「もう終わり? なら仕方ないか。続きは美月に遊んでもらおっと」

「いやいや、冗談だろ? 俺はお前より先に終わらねえ」

 晴祥はふらつきながら起き上がる。木に当たった衝撃はかなりのものだったようで、全身に響いているのがわかるほど、小刻みに震えていた。千春はそんな晴祥を見て、申し訳なさそうな顔をする。

「う~ん……。あれだけ煽っといて申し訳ないんだけど、もうアンタと戦う気あんまりないんだよね。煽ったのも逃げないようにって理由だし。こそこそ隠れてめんどくさいからさ。それだったら美月って人で遊んだほうが楽しそうなんだよね」

「美月で、遊ぶ? ……おいおい、滅多なこと言うなよ。わかった、もう隠れない。望み通り殴りあってやるよ。それで続行だ」

「……はー、分かったよ。先にアンタを殺してから遊ぶことにするわ」

 晴祥はふらつきながら千春に殴り掛かる。吹き飛ばされた距離分離れているため、届くまでに少し時間があるのだが、千春は待てなかったらしい。パァン、と一発。生成したハンドガンで見事晴祥の肩を打ち抜いてみせた。

「わー、当たった。ということで、バイバー……」

「あれ、なんで銃持ってんの?」

「……誰?」

 千春は目を輝かせながら問いかける。

「名乗るほどじゃない、藍沢美月のタダの連れだよ」

「美月の、連れ? おい、おいおい、おいおいおい。お前、マジで言ってんのかよ」

「ミツキに反応したってことは、アンタが三辻晴祥か。さっき撃たれてたけど死んでなかったんだ」

「やった! 二人め! 経験値いっぱいだ!」

 千春はその場でぴょんぴょん跳ねる。どうやら、とても浮かれているようだ。すでにアルと晴祥の攻撃が届く位置まで近づかれているのに、全く気付かないほどに。

「ちっ……!」

「うそぉ!」

「ああ! 強くなるって楽しい!」

 油断しきっていたはずなのに、千春はアルと晴祥の同時攻撃を見事に防いで見せる。千春の強さにアルが驚いていると、黒い何かがアルの頬をかすめ取った。

「危なっ! 何すんのさ!」

「ちっ、狙いが定まらねえ」

「誤射なら仕方な……」

「首狙ったのに」

「看過できないなぁ、それは」

「……仲間割れとか、興ざめなんだけど」 

 喧嘩する二人をみて、千春は呆れてため息をつく。すると二人は不思議そうに互いの顔を見合った。

「仲間?」

「割れ?」

「ははっ。、面白いこと言うね。こんな仲間いたら足引っ張るだけでしょ」

「仲間じゃない。友達の……友達までいかないか。なんか周りにいる奴だ」

「じゃあ君らの仲間は一体どこにいるのよ」

「僕の怖い顔の仲間は、胡散臭い男と共に、不愛想なロン毛と戦ってるよ」

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