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ライアンを囲んで



 シエルとハーンがじっくり診て少し話し合った結果。


「測定の魔道具が必要ではありますが、ライアン様には土の魔力が確認されました」と、シエルは結論付けた。


「は? 俺、魔力なしだったはずだけど?」


「稀な事象なので付与、と表現して良いのかわかりませんが。ミニミニミニ族の加護が最低限の護りで、そこから更にガルヴォの土の精霊より贈り物を賜り初級程度の魔力が貴方の身体に…そうですね。縫い付けられたというべきか、根付いたというべきか」


「本当に、めちゃくちゃ稀有なことですよ。魔力なしからのレベルアップとか俺は聞いたことりませんもん。これはぜひぜひ一度魔導士庁にご同行願いたいですねえ」


 ハーンは頬を紅潮させ、目をらんらんと輝かせている。


「ハーン、気持ちはわかるけれど今日は押さえてちょうだい。ライアンも今日は飽和状態でしょうから」


 今すぐライアンを拉致しかねないハーンをマリアロッサは宥め、いずまいを正す。


「そもそも貴方はずっと土の精霊たちの加護を受けていたのではと私は思っていたのよね。そうでないとあの絶望的な戦況でリチャードの側近として一番戦力外の貴方が生き残れたのは運が良すぎるもの」


 クラークよりはるかに剣術の腕が劣るライアンは同じく文官のコールと共に戦死してもおかしくない存在と目されていた。


「マリアロッサ様…。戦力外の私に行くように命じたのは貴方様なのですが」


 恨めし気なライアン脇腹にリリアナがまたもや拳を入れる。

「その件については見込み違いだったの。ごめんなさいね。正直なところ、あんな激戦になるとはだれも予想していなかったでしょう。しかも総司令のリチャードまで巻き込まれるなんて。決して物見遊山のために送り込んだわけではなかったけれど、死ぬ目に遭えばいいとは思っていなかったのよ」


「はい…。それは解っているつもりです」


「ついでに言うならば、クラークとコールが助かったのも、おそらくライアンと行動を共にしていたからだと私は思っているの」


「私もそう思います。ライアン。ジュリア様と四十七人の土の精霊たちは心というより魂で繋がっているようなものだったのよ。だから命がけで産んだアベル様が亡くなった時に耐えられなくて世を去った。でもね。きっと、あとになってそういやジュリア様の子どもってもう一人いたじゃないか。その子も守らなきゃって慌てたんじゃないかしら」


「ガルヴォの子でないのに?」


「ええ。土の精霊たちはミゲル・ガルヴォの支配する地からこっそりホランドにジュリア様の事について情報を送っていたのよ? 彼らにとっての一番大切な人はジュリア様だった。まあ、私の勝手な憶測だけどね」


 母に容赦ない力で殴られた脇腹を撫でながらライアンはぽつりと呟く。


「俺…一応カウントされていたのか…」


 ジュリア・クラインツの子どもとして。


 ライアンの口元が少し緩んだ。


「ええ、そうね。そのようなわけで、改めて自己紹介するわね、ライアン。私はマリアロッサ・ゴドリー。貴方の伯母にあたるわ」


 鷹の瞳と密かにあだ名される鋭いまなざしのままで、にこりとマリアロッサが笑いかける。


「私は従兄のリチャードだ、ライアン。ちなみに私も真実を知ったのは三日ほど前だ。心中察するに余りあるな」


 隣で頬杖ついて笑う美丈夫は主人として長年仕えてきたはずで。


「弟のような存在と思っていたけれど、まさか本当に従弟だとは、私も驚いたよ」


「リチャード様…」


「親戚ということで、これからもよろしく」


「リチャード様とマリアロッサ様が親戚…」


 めまいがするのか、ライアンは額に手をあてて目を閉じた。


「あの…。大変申し訳ないのですが。数日程…、頭の整理をする時間を頂いてもよろしいでしょうか」


「もちろん、許可しよう。気持ちが落ち着くまでゆっくりするが良い、…従弟殿」


 気安い間柄だからなのか、リチャードがライアンを少しからかうそぶりで応じ、軽く声を上げて笑う。


 ヘレナはリチャードが自然に笑っている姿に、目を丸くした。



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