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拡張工事大作戦①


 食事を片付け、テーブルの上にゴドリー伯爵邸の地図を広げた。

 ホールで待機していた使用人たちもほぼ全員食堂へ入り、壁際で話を聞く。


「予定ではこのようになりますが、あくまでもおおむねなのでご注意ください」


 ウィリアムが説明を始めた。


 今回、これほどの人数が動員されたのは単なるデモンストレーションではなく、作業が生じるからだ。


 これから本格的な冬となり積雪が始まると、時には物資の補充が困難になる可能性がある。


 ヘレナが機織りをするのはもちろんこの別邸で、作業場所は玄関ホールの予定だ。


 今までの刺繍やレース編みなどは二階の一室で十分だったが、機材材料共に置き場が足りない。

 ラッセル商会から出庫した基本の糸と、王宮からストラザーン家が預かり運んできた特別な材料を、きちんと整理して保管せねば作業も滞るのは目に見えている。


 屋根裏に空きは十分あり最初はそちらに運ぶ案も出たが、転移場所であることは秘密であるため、極力人を立ち入らせないことになった。


 結論として隣に小さな倉庫を建てようと言うことになり、あわせて更に敷地をもっと広げる…、つまりは囲いを作り直すのが今から行う作業だ。


「私とライアンが指示する場所にラッセル商会が用意した杭を打ち込むのが我々の仕事です。人員配置も書き込んでいます。皆さんここで必ず確認してから外へ出てください」


 本来ならヴァンも指示する役割だったがいまだ戻らず、それを急遽テリーとヒルが担うこととなった。



「あの、この期に及んで何ですが…。敷地は別に拡げなくても大丈夫じゃないかと思うのですけど…」


 増設する建物は屋敷の半分ほどの大きさの簡素な二階建て。

 もともとの囲いの中に納まる規模だ。


 そこまで大掛かりなことをしなくても良いのではとヘレナは思う。


 ただでさえ大樹と茨の囲いで悪目立ちしている。

 父が契約金をすでに溶かしてしまった居候の身としては、なるべく目立たず騒がず時間を消化したい。


「何言ってんだい。そもそも家畜が結構育って手狭になっていたじゃないか。この際大きくしてもらった方がいいんだよ」


 すぱんとミカが却下し、シエルも頷きながらヘレナを説得する。


「そうですよ。今回のように物資を運ぶ馬車が何台も来た時の対応もしやすくなります」


 念のため外で待機させている馬と車にはゴドリー邸の門をくぐった時にラザノ夫妻特製の護符が貼られているので、今回は安全だが、いつもそうとは限らない。


 人馬共に魔改造植物に護られた敷地内に素早く入れた方が良いに決まっている。


「…ヘレナ嬢。二人の言うとおりだ。そもそもこの建物の周辺は長い間忘れ去られて寂しい場所になっていた。君たちが存分に使ってくれた方が両親も喜ぶ」


 リチャードはまっすぐにヘレナを見つめて頭を下げた。


「当日になってこんな話をせねばならないのも、先ほどのくだらない妨害に遭うのも…。いや、何よりもすべてが後手に回っているのは、私が不甲斐ないせいだ。すまない。今回は君を護っている人々の意見を取り入れてほしい」


 現当主の真摯な謝罪に、ヘレナは折れる。


「そうですか…。では、お言葉に甘えて」


 全員が二人の会話を見守る中、エルドは目をらんらんと輝かせ肩に手を当て腕をぐりぐりと回していた。



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