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お茶会にて

アッカネン伯爵家令嬢マリッカはハーポヤ公爵邸に着くと馬車を降りてすぐ、執事に案内されるまま庭園に用意された大きな傘を差し掛けられたテーブルへと案内された。


「本日は、お招きいただきましてありがとうございます。」

「遅いわよ、マリッカ!」


黒髪黒目で泣きぼくろのある妖艶な美少女のサルミ侯爵家令嬢ヘルカがいつものように叱責する。


「あらあらお寝坊さんねー、マリッカは。」


ブルネットにグレーの瞳の優しげな美少女のマルヨ侯爵家令嬢ヒルダがいつものように笑う。


「ようこそ、マリッカ。」


このお茶会の主催者である金髪碧眼スタイル抜群完璧美少女のハーポヤ公爵家令嬢エリザベトがいつものように素っ気なく歓迎する。

マリッカはこのお茶会に毎回遅刻したことにされるが時間通りである。

お決まりの茶番であった。


「さ、座って。」

「はい、エリザベトお姉さま。」


マリッカはこの3人の高位貴族令嬢からいじめられているわけではない。

逆に大層気に入られていてお姉さま呼びを強要されている。


「さて、今日はなんのフレーバーかしら?」

「ラベンダーでございます。」

「まあ!面白そうじゃない。早く出して見せて。」


ヘルカお姉さまに急かされ、お持たせをテーブルに広げる。

アッカネン伯爵領産のフレーバー・シュガーである。


アッカネン伯爵領では甜菜の栽培が盛んで製糖業が主要産業ではあったが、甜菜糖はサトウキビ製の砂糖の代用品としか認識されてなく、また砂糖は高価な贅沢品であるため貴族階級に敬遠されている状況では売り上げは芳しいものではなかった。

それが約2年前にマリッカが思いつきでシナモンを入れた角砂糖を作って家族にイタズラをしかけたところ「そ・れ・だ!」と激賞されて逆ドッキリにあってしまったのだ。

伯爵家主導で領内の製糖業者にフレーバー・シュガーを作らせたところ大当たりして海外にまで輸出されるようになっていた。

マリッカはせっかく伯爵家が関わるのだから良いやつには家紋でも使わせてあげたらいいのではー?と適当に言ったら「それも採用!」ということで、今やアッカネン伯爵家のフレーバー・シュガーは有名ブランドとなっているのだった。

伯爵家にも税収に上乗せて家紋使用料が入ってカツカツだった領地経営も潤ってみんなツヤツヤである。


「いい香りね。お茶に入れてもちゃんと香るじゃない。さすがアッカネン伯爵家のフレーバー・シュガーね。」

「ありがとうございます。」


みんな楽しんでくれているようでなによりだった。


「ところで相談なのだけど…」


エリザベトお姉さまが珍しく言葉を濁した。

マリッカは察していた。それもここに来る前から察していた。


エリザベト・ハーポヤ公爵家令嬢はアードルフ・エスコラ王太子殿下の婚約者である。

王族と公爵家なので当然、政略結婚に決まっているが恋愛禁止というわけではない。

婚約者同士が恋愛したっていい。むしろなんで恋愛しないのか?おかしいでしょ!

というのがエリザベトお姉さまの心の叫びである。

直接聞いたわけではない。

マリッカは察するのが得意なのだった。

そしてこれは他2名も同様なのであった。

王太子殿下側近の海軍大将令息マーティアス・ニッカネンの婚約者であるヘルカ・サルミ侯爵家令嬢。

同じく王太子殿下側近の宰相令息タルヴォ・オッリの婚約者であるヒルダ・マルヨ侯爵家令嬢。

彼女らは学園生徒会役員の婚約者たちのいちばん身近にいる2年生唯一の生徒会役員であるマリッカに期待しているのだ。


もともとはイケメンの婚約者たちが生徒会室に籠ってなんやかややってる中に紅一点でいるマリッカを警戒して呼び出したのだが、心の機微に敏感でメチャクチャ気配りの出来る可愛い後輩であることが分かると手のひらを返したように愛でてきたのだ。

ちなみに生徒会の偉い人3人にもマリッカは妹ポジで可愛いがられている。

世渡り上手である。

学園での揶揄いを含む可愛がりは誤解を招く恐れがありますと進言してからは公爵邸でのお茶会に場所を移した経緯がある。


また、もうひとつ警戒を解いた大きな理由としてマリッカの容姿があった。

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