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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

魔王と勇者は歴史におり

作者: 癒え血

歴史家の部分だけでも楽しんで読んでください。

人が生まれるのに理由は無い。

 それと同じように魔物が生まれるのにも理由は無い。

 人の中に王がいるのには理由がある。だが、時の流れは残酷で理由すら曖昧になった。


 曖昧だということは要らなくなったということだ。


 要らないは、誰かの言った極論かも知れない。だが、これが一番わかりやすかった。


 歴史は繰り返さない為にある。ただ、どのようなことにもイレギュラーって言う想像を超える何かが存在する。歴史においてもそれご適用されただけ。それこそが歴史に残る大災害となった魔物の王の誕生だった。


 辺り一面に何も無い場所、後の魔王生誕の地である魔物の森は、この日、天変地異により、地図の地形が変わった。

 魔物には種類がある。

 どれも人間と比べたら強いが魔物同士だったら種族さが生まれる。賢い魔物や馬鹿な魔物。力がある魔物や、力がない魔物。本当に色々だ。


 魔物の森では大地が割れた。天が赤く染まり、空間が裂けた。まるで世界が王を生み出そうとしているみたいだった。魔物達はその光景に魅せられた。魔物達は本能的に理解した。王が誕生したことを…。

 王が誕生した魔物達はまるで水を得た魚のようだった。

 魔王が人間が支配している土地に侵攻を始めた。人間たちは魔物の軍勢に成す術すべもなく蹴散らされた。魔物達は魔王と共に戦う姿から気が付けば魔王軍と呼ばれるようになった。そして、30年という年月で既に世界の半分は魔王に支配された。ただ魔王軍にも問題が起きた。


 星刻歴1500年。

 人類の歴史の中で魔王の支配から抜け出せるきっかけに成る存在が誕生した年だった。

 魔王の支配とは縁の無い辺境の村で生まれたノアという少女だった。

 人々は勇者と気が付けば呼ぶようになった。

 そこにどんな意味があったのか分からないが…。


 勇者ノアは、最初はちっとも強く無かった。

 むしろ弱かった。

 そりゃそうだ、魔王なんて縁の無い場所で生まれた、ただの少女だったんだから…。


 ただの辺境の村のノアが勇者ノアに成るまでに何があったのか後の歴史では永遠の謎になっている。

 ただし、勇者ノアを調べていくとあることにたどり着く。

 ノアという少女はイースという少年と仲が良かったということが勇者の日記から発見された。歴史学者は色んな議論を交わした。ある者は勇者と恋仲だったとか、またある者は勇者の弟だとか色々言われた。しかし、これも未だに解明されていない。だからこそ歴史学者は今日も歴史の謎に挑戦をする。


 今でも眠ると8年前のまだ12歳だった頃の夢をよく見る。


 「ノアー、起きなさい!」

 母さんの声が聞こえる。ただ、まだ眠い。

 「ノ~アー。起きないと寝巻のままイース君に会うことになるわよ」

 何でイースの話?このままイースに会うことに?どういうことだろう?

 「母さん、どうしてイースと会うことに?」

 私が母さんに聞くと何を言っているの?というように母さんに言われた。

 「今日はゴートの町で秋祭りが…」

 母さんがそこまで言うと。

 「おーい。ノア、速く来ーい」

 家の近くからイースの声が聞こえた。私はとっさに言ってしまった。

 「今すぐそっちに向かう」

 母さんは呆れた顔をしていた。

 「ノア、あなた着替えもせずにイース君と秋祭りに行くの?」

 盲点だった。

 「あっ、忘れてた」

 ヤバい、どーしよう。今すぐ行くなんて言っちゃった。そう思っていたら近くからイースの声が聞こえた。

 「おーい。速く速くー」

 ど、どうしよう。私は困ったから母さんの顔を見た、だけど、母さんは早くしなさいっていう目で私を見ていた。

 「ノアー。まさかだけど、お前起きたばっかだろーー」

 な、何でバレたの!?

 「イース。もしかして賢い?」

 母さんに聞くとバカな子供を見るような目で罵倒された。

 「ノアが毎日のように起きるの遅いからだよ」

 家の近くからまた、イースの声が聞こえた。

 「ノア。先にゴートの町に行っているからなー」

 「ごめん。分かった」

 そう言って私は返事を返した。


 意識が薄っすらとしてきた。

 目を覚ますと、結界の周りには魔物がうじゃうじゃとやって来ていた。

 「やっぱり私は魔物が大嫌いよ」


 魔物達はノアがそう言った瞬間意識を失った。

 「特に魔王が一番許せない」

 ノアは魔物の森の奥地の魔王城へと足を進めた。


 魔王は50年前のことを思い出す。

 まだ、魔王が右も左も分からなかった頃のことだ。


 ーここは、何処だ?お前達はなんだ?

 「ここは、貴方様の誕生の地でございます。そして、私達は魔物でございます」


 ーおれは、誰だ?

 「貴方様は、我らの王でございます」


 ー王とは何をする者だ?

 「統べる者のことを王と言います」


 ー俺は何をしたら良い?

 「貴方様の好きなことをなさってください。私達はそれが一番喜ばしいです」


 ーそーか

 「はい」


 後世の歴史で最も謎に包まれている出来事は、魔王の目的である。魔王が何故世界を支配しようとしたのかは、誰も知らない。魔王が残した物は沢山あったが、そのどれにも、それらしき手掛かりが無かった。


 今、俺の前には勇者と呼ばれる少女がいる。


 ー勇者よ、何故お前は俺の邪魔をする。正直言って不愉快だからやめてくれ。俺は、世界を支配しようとしてるんだ


 「魔王、あなたが支配を止めるまで私は何回でも邪魔をするわ」


 勇者は不快にも、俺の邪魔をやめないと答えた。これほどイライラすることは中々無い。


 ーなら、俺の前から消えろ!


 俺は勇者に向かって爆破魔法を発動した。だが、勇者は簡単に俺の攻撃を避けた。


 ー何故、お前はそれだけの力を持っていて世界を支配しようとしない?俺には、お前の気持ちが到底理解できない。


 「魔王、あなたには一生理解できないよ。それに、誰かに理解されるような薄い人生を生きて無いわ」


 俺の前でごちゃごちゃと意味の分からないことを勇者は言い続けている。


 ーそろそろ死ね!


 俺が勇者を殺そうとして魔法を発動すると、天変地異が起きた。空は割れ、海は浮き始め、地は闇に消えた。勇者は闇に飲まれていった。


 ー偶にお前みたいなことを言う奴が来る。確か、イースだったかなぁ?あいつ、弱いくせに俺に復讐してやるとか言って襲いかかってきたなぁ。あれは笑った。まぁ、俺に攻撃したんだろうけど、俺の配下の四天王が次元の狭間に追いやって殺したんだがな。


 俺が勇者に過去を懐かしむように言うと、勇者は目を強く開いて俺を睨んできた。


 ーもしかして、知り合いだったらしたのかなぁ。まぁ、知り合いだったら悪いことをした。まあ、同じとこに送ってあげるから許してくれ。


 俺は、笑いながら勇者に次元魔法をぶつけた。


 ーこれで目障りな奴がいなくなったな。


 私は魔王の魔法で次元の狭間に追いやられた。

 周囲を見回しても何も無かった。ただ、そこにあったはならない物があった。


 「イース...あなた、剣だけ置いて...」


 イースの剣が置いてあった。次元の狭間に追いやられたのは本当みたいだ。


 今でも思い出す。8年前の夏祭りでの出来事を。私達は、故郷を失って、両親を失った。イースは、その日から変わってしまった。


 仕方なかったんだと思う。大切なモノを一度に失うと誰だって自分を見失う。イースは、復讐に取り憑かれた。


 「イースの最後は如何だったんだろう。イースは多分ここで死んだんだろうなぁ」


 私は言っていて悲しくなった。ポロポロと、あの日に枯れるほど出した涙が出てきた。


 「イース。大切な人が死ぬのは辛いよ」


 私は、このよく分からない次元の狭間に追いやった魔王が許せない。


 だから...。


 世間から勇者と呼ばれていた少女が消えてから一週間が経った。魔王の侵攻による被害は出るばかりで、とうとう人類は残る大陸が後一つになった。


 魔王の配下が守っている大陸が、突如奪還された。それも、いなくなったとされる勇者の存在により。


 魔王は、魔王城で怒りに震えていた。自分の物を取られた子供のように癇癪を起こしていた。


 ーお前達、何をやっている?あそこは俺のものだぞ。あと少しで、世界の全てが手に入ると思ってたのに。あと少しだったのに。


 魔物達は、王に怒られて涙目だった。


 後の歴史でも、勇者がどのように次元の狭間から帰って来れたのか記された物は無かった。多分、勇者にとって何か思い入れの深い何かがあったんだと思われる。


 勇者がまだ生きていると知らされた人々は歓喜に満ちた。人類はまだ終わっていないと。しかし、勇者でも簡単に窮地に追いやった魔王に人類はただただ怯えるばかりだとダメだと今更気づいた。


 誰かが言った。

 「勇者を援護する仲間を探そう!」

 この言葉は誰が言ったのかわからない。だが、気がつけば勇者の周りには仲間が沢山いた。前に魔王に単身で挑んだ時とは違う、大勢の仲間がいた。


 後の歴史家は語る。

 この時にようやく、人類は窮地に立たされていることに気がついたと。

 その歴史家は、お前何様だよと叩かれまくったが、それはまた、別の話。

 窮地に追いやられた相手は何をするか分からない。魔王は初めて人類に関心を持った。今まで誰一人として助け合おうとする人間達を見て来なかった。人間は弱い生き物だと魔王は勝手に勘違いをしていたんだ。


 魔王は気がついた。

 人間は弱い。これは間違いない。偶に目にいれていいぐらいの奴はいるが単体では魔物と違いゴミだ。だが、人間は助け合うと途端に力を発揮する。怖く、気持ちの悪い生き物だと言うことに。


 魔王が残した遺産の中に、人間について書かれた魔王の研究書らしき物があった。それには、魔王が人間に対して行ってきた非道なことの数々があった。代表的なものは、人間の子供に寄生型の魔物を住まわせると子供は、何日持つかの研究などだ。


 ある歴史家は語る。

 魔王は当時の人類に一番恐怖を与えた相手だと。後の世では、言うことを聞かない子供には、魔王が攫ってしまうということが言い聞かせられている。当時だと笑えない冗談だろう。


 勇者は今、魔王軍四天王の屋敷を襲撃している。四天王の名前は、オウム。災厄の魔物と呼ばれる存在だ。奴が人類にしてきたことはどれも非道だ。そもそも、魔王軍四天王で行いがまともだったのはいない。


 私には今、仲間がいる。単身で魔王に攻めた時とは違い仲間がいる。

 私は、この前、次元の狭間に追いやられていた。正直言って抜け出すことは不可能だと思っていた。だけど、イースが残してくれた剣で私は帰って来れた。


 イースが、次元の狭間で何をしたのか私には分からない。ただ、イースの残した剣を触ると、まるでイースがそこにいるような気がした。


 私は今度こそ魔王を倒す!

 四天王も全て倒して、奪われた故郷に帰るんだ。もう、誰も大切な人がいないけど、あそこは私の故郷だ。



 四天王オウムは、疫病を蔓延させる魔法を使う魔物だった。そして、故郷を奪った相手でもある。疫病は、気がついたらそこら中に蔓延して誰かの大切な人を簡単に奪っていく。


 「四天王オウム。何故お前達魔物は人を簡単に傷つける?」

 我の前に勇者と呼ばれる少女がいる。その少女は我にあまりに変な質問をする。

 「我は魔王様の命令に従っただけだ。お前達人類も、冒険者とかいう輩がいるだろ?そいつらは何故魔物を狩る?生きる為だろ?勇者、お前の質問は馬鹿馬鹿しい」

 我はそう言って、呪い魔法を発動した。呪い魔法は、我の少ない攻撃手段だ。呪い魔法の特性は、呪いは確実に相手に当たることにある。

 「そーか。やっていることは一緒なのかも知れない。だけどお前達の中にも話の通じる奴がいるじゃない」

 「お前達人間が魔物の話を一切聞かないからだろ」

 勇者は我の発動した痛覚倍増の呪いを受けている筈だ。痛み倍増の呪いは、人間がくらえば痛すぎるあまり、ショック死する呪いでもあるんだが、何故こいつは痛がらない?それどころか何故会話ができる?

 「勇者、我はさっき呪い魔法をお主に発動した。だが、何故動ける?」

 勇者に我が質問すると、勇者はケロッと何でもないかののように我に答えた。

 「私は、特殊体質で呪いにはかからないわよ」

 そんなことがあってたまるかー!それが本当なら我はこいつに如何やっても勝てない。

 我は逃げることにした。だが、気がつけば我の頭は宙をまっていた。

 「魔王...様」


 私達人類は、初めて四天王を討ち取ることが出来た。周りの仲間はみんな騒いでいる。私は、四天王オウムとの戦闘を思い出す。


 四天王オウムは私にとっては弱かった。だご、人類全体で考えると、とんでもなく厄介な敵だった。


 遠くで、疫病を蔓延させる魔法を一帯に発動し、近くで呪いの魔法を使う。普通の人間では倒せなかっただろう。私は、呪いが効かなかったから偶々勝てた。だが、もし呪いが効いたいたら多分倒せなかった。


 後の世で歴史家は語る。

 四天王オウムと勇者の戦いについて。勇者は特殊体質で呪いが効かない。そして、オウムの魔法は呪い魔法と疫病魔法。疫病魔法は近くで使うと使った本人にも影響力があるから使用しづらく、オウムは呪い魔法しか使用出来なかったと。だから勇者は快勝した。


 勇者の物語にしては、一番味気の無い相手であると歴史家は言った。


 まぁ、その歴史家は呪い愛好会の会長をしていたけれど、何言ってんだお前と言われ追放された。それはまたどうでもいい話だ。

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