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【私小説】

ライブビューイング


今日はある売れかけのバンドの演奏をライブハウスで見てきた。


バンドマン達がいそいそと機材の準備をしている中、観客たちはおしゃべりをしたり、スマートフォンの画面を見つめていた。


私はじーっとバンドマンを観察していた。



エフェクターを用意したり、ギターのチューニングをしたり、マイクのテストをしたり。


この時間は結構不思議なもので、演奏が始まると皆わーわーと盛り上がるのだから今から盛り上がってくれてもいいのになぁと思うのだ。


私は他力本願にそんなことを考えた。


もう少し売れてくると、機材の準備をしている彼らに歓声が上がるのかもしれないけれど。


周りを見ると私意外の皆は結構暖かそうな恰好をしていた。


私だけ完全にバンドTシャツ一枚で浮いてしまっている。


とりあえず場に馴染もうと首に掛けているタオルだけ手に持ってみる。


しかし、それは大して意味のないことに気づいた。半袖のTシャツを着ている時点で無理があった。


私は渋々とタオルを首に掛け直すと、居直れ。居直れ。と自分に暗示をかける。



20分ほど突っ立っていると、遂にバンドの演奏がスタートする。


最近出したばかりのアルバムから強めの曲をファーストに持ってきた。これは最高だ。


不穏で暗い歌詞を明るいポップなメロディで歌い上げるのがこのバンドの特徴だ。


その中でもこの曲はバンドの色をよく表したいい曲だ。自己紹介がてらにいいだろう。


そんな上から目線で批評をしてみた。


演奏が始まる前まではもういい年だから、そんなにはしゃぐと大人げないだろうなぁと尻込みしていたが、


曲が始まるとちゃんと私の心は踊り出した。やはり、私の目に狂いはない。とてもいいバンドだ。



2曲目が始まったあたりで、観客の反応を私なりに探ってみる。うんうん。まずまずといったところか。


今回のライブは主催のバンドが別なので、このバンドを見に来ているお客さんは少ないことが推測される。


それで、これだけの反応ならまずまずといったところ。



3曲目、4曲目。うーんちょっと観客のノリがよくない。


バンドマンも観客受けを気にして、手を叩くように促している。


バンドマンが好きに聞いてくれていいぜって感じなら、私も頑張らないのだが。


盛り上がってほしいとあらば、頑張らざるを得ない。


ライブは生ものだ。観客も楽しくなる努力は少なからず必要だと最近分かってきた。


私なりに掛け声をかけたり、腕を上げて振ってみたり頑張った。この努力は帰りの電車の中辺りで思い返して、恥ずかしさに悶えたりする。


私は自意識過剰なのだ。えっへん。



それでもこうしてライブを見に行くのは、やはり音楽が好きということなんだろうねぇ。





最後の曲に入る前になると、大分観客も温まってきて、いい感じに楽しくなってきた。


最後の曲は私が一番好きな曲だった。幸せ。









ライブビューイング -終-



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