第27話 侵入者
長らく投稿が遅れました。
昨日の事、そして今日から起こりうる事。少年は少しの期待を胸にしていた。
大切な仲間を取り戻し、少年にとっての新たな冒険への幕が上がるのだから…
少年はふと目が覚めた。目をパッチリと見開き、瞳で当たりを確認する。昨日目覚めた宿屋だ。少年は体を起こすが、楽には体は持ち上がらない。深手をおった傷が依然として体に伸し掛るからだ。 何とか抵抗し起き上がると右隣から、澄んだ声が少年の名を読んだ。
「起きましたか、真琴くん。」
隣には金髪の耳が長い女の子がベットに座っていた。手には本を持っている。どうやら読書をしているようだ。そんな彼女に少年…真琴も返事を返す。
「お、おはよう。アイリス」
するとにこやかにこちらに笑みを返す。
「傷の具合はどうですか?」
「少しは楽になったと思う。これもアイリスの看病のおかげだよ」
「…いえ、これぐらいは当然です。」
そう会話を重ねていると、真琴がある事に気がつく、左隣の物入れに立てかけてある剣を手に取った。そしてこの前の戦いの事を思い出す……いろいろあったなとふけた後に、鞘から刃折れの剣を抜くが…剣を抜いてみると、前まで折れていた部分に刀身があった。
何となく感じ取れるのでは無く、くっきりと刀身がある。光に照らされ光沢を帯び、光を反射している。
「…なんか、変わってる……」
剣を見た第一声はとてもではないが酷い、それはそれとして心做しか鍔や柄の部分の装飾も前とは多少異なっている。
自分の知らぬ間にアイリスが鍛冶屋にでも持っていったのかと思い真琴は尋ねてみた。
「なぁアイリス、この剣、前と見た目が変わってるけど鍛冶屋にでも持っていったのか?」
アイリスは不思議そうな顔をしてこちらを見ると、その代わり様に驚いていた。
「いえ、鍛冶屋には持って行ってはいませんが……それにしても凄い変わりようですね、それ」
真琴は驚いてはいたが形が変わっても別に気にならなかったため、そのままにした。
「まぁ、いっか」
本の途中に栞を挟み、アイリスが何か提案をしてきた。
「真琴くん、とりあえずギルドに申請しに行きましょう」
「ギルドに申請、何を?」
間が抜けたような対応に思わずアイリスもため息を零した。
「はぁ〜、私たちの最初の目的を忘れましたか?」
「いや、それは覚えてる。」
「なら、何となく察しは着くはずです」
「……」
そう言われしばし考えてみる。
(ギルドに申請……クエスト受けるためか……高額なクエスト……!!)
「あ、そうか!ギルドに登録するんだ自分の事を、じゃないとランクの高いクエストが受けれないんだ」
「その通りです」
今まで受けたクエストはギルドの申請に溢れたクエストだ。だから、金利も安く数もそうない。なので冒険者はギルドに籍を置いてクエストをこなし、報酬を得る。
手に職のないもの達はこのようにして生計を立てているらしい。そうと決まればベットから立ち上がり、棚の脇に畳まれて置いてあったボロボロのシャツを着る。その姿を見かねたアイリスがこんな事を言い出す。
「まずはまともな衣類を調達しないとですね……」
「そうだな……」
途方にくれかのように、真琴の空気が重くなった。
それから支度が済むと、宿屋から町へと出てみる。周りでは色々な人々が行き交っていた。この町は王都に比較的近い町で、商人や王都へ向かう人々か通る街道に位置する町らしい。規模はそこまで大きくはないのだが、如何せん夥しい数の人だ。真琴は少しその圧におされそうだった。
とりあえず、服屋に向かった。真琴が眠ってる間にアイリスはこの町を探索し、ある程度の場所を把握していた。服屋は宿屋から比較的近くにあったのだが、人混みが多く行くまでに苦労した。
服屋のドアを開くと、ドアの上部に設置されたドアベルが鳴る。すると若い男の人が「いらっしゃい」とお決まりの言葉を掛ける。
この店は服屋にしては、服をあまり店頭に置いていない。これで服屋と呼べるのかと思ったが、アイリスが迷わず店主のいるカウンターに歩み寄った。
「すみません。あの男の子に会う服を見繕って欲しいのですが」
「ん?」
店主は脇から真琴を見た。真琴は平然と立っている。すると店主は座っていた椅子から立ち上がり、カウンター横の暖簾の掛かった部屋に入って行った。
入ってまもなく、店主がひょっこり顔を出して真琴に尋ねた。
「君、服の好みとかある?」
「あ、え…」
急な質問に少し戸惑うがすぐ様答え直す。
「えっと、できるだけ普通なのでお願いします」
「普通ねぇ……」
そう言って顔を引っ込めた。それから数分後に、店主が裏から出てきた。手には三着の服を持っていた。
「君の要望だと、ここ辺りかな?」
店主は持ってきた三着の服をカウンターに置いた。一つは藍色の襟付きのシャツ、二つ目は黒色のTシャツ帳の服。三着目は少し派手にも思える火模様の入った柄のシャツ。真琴はこの三着から真っ先に火模様の入ったシャツを選ぼうとしたが、アイリスに遮られ最初の藍色のシャツを選ばれた。
「これでお願いします。」
「ちょっ……」
言葉を挟む暇などなく、淡々とやり取りが進んでいく。そして一切真琴が口をはさむことなく買い物が完了する。
「なぁ、ちょっと……!?」
「試着室はあそこです。」
真琴はアイリスに強引に試着室に押し入られた。人一人が限界の空間に詰め込まれ、試着室と店内を分けるカーテンによって遮られ購入したシャツに着替えた。
「…どうかな?」
なんだか少し恥ずかしかった。女性と一緒に服屋に来ることなど生まれて初めてだった。リア充はこういうことがしょっちゅうあるのかと思うと、少しうらやましくも思えた。
試着が終わると早々と店を出た。
真琴とアイリスは、次の目的のギルドへ向かおうとしたとき、町の人々が慌ただしく、町の入口付近の広場へ向かっているのが気になった。
「なにかあったのでしょうか?」
そう気にかけるアイリス。
「…かもな、とにかく行ってみよう!」
そう言い出すと、我先にと真琴は走り出す。その後ろをアイリスが追う。町の人々が走って向かう先には、一際目立った大柄の魔物が立ち伏せている。全身が凹凸のある岩でできた巨像。俗にいうゴーレムだ。
いったいどういう経緯でこの村に来たのかはわからないが、とにかく非常事態だということは分かった。町人たちはただ立ちつくすだけだ。すると、人の波をかき分け自警団がゴーレムと対峙する。
「…ゴーレムか」
「しかしなぜこの町に…」
自警団は少しこの状況を恐れているようだ。それもそのはず、このゴーレムが暴れだしたら、ひとたまりもない。町は壊滅の危機に陥るかもしれない。倒そうにも、固い岩石でできた体を貫くことは易くない。だが食い止めなければやられる。一同が固唾を飲む中、自警団は意を決し仕掛ける。
「はぁぁぁッ!」
先頭を突っ走る老練の騎士が、剣先をゴーレムの胴へ命中させる。もちろん弾かれることは分かっていた。しかし剣先を岩の表面に沿って滑らせゴーレムの後ろに回る。
そして先にゴーレムの後方に回り込んでいた残りの面子が矢をゴーレムの顔に数発当て、注意を惹く。するとゴーレムは自警団の作戦にかかったのか、一歩足を踏み出した途端、拳を構えた放つ!その拳はゴーレムから数メートル離れた、自警団に届くほどに拡張した。
とっさに回避するが、ゴーレムは自警団の策にはハマらず、逆に大きく暴れだした。
「グウォォォ!」
大きく雄叫びを上げ、自警団に攻撃を仕掛けた。先程と同様に拳を放つと、関節部が伸びているのが分かった。そして的確にその拳は自警団を捉える。
まずは弓を持った一人を拳で吹き飛ばし、もう1人は下からのアッパー攻撃で上空へ飛ばす。
そして残るは老練の騎士だけどなった、ゴーレムの拳を巧みに交わすが、じわじわと詰められ、遂には避けることが困難になったとき盾と剣で防ぐも、両方とも破壊され老練の騎士は町の門に激突する。
ゴーレムは容赦なく老練の騎士を殺しにかかった……




