表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
zero×騎士  作者: 朧月 燐嶺
第2章 覚醒
33/46

第25話 洞穴を抜けて

 真琴は不利な状況下で何とか親玉を倒した。喜びを表に出したが、そういうわけにもいかなかった。


「ぐぅ……無理したなぁ……」


 そういうと真琴は地面に膝をついた。真琴の体も限界に近づいていたのだ。今になって傷が痛みだす。真琴はポケットからポーションを取り出し飲み乾す。苦さが口の中に広がる。だがおかげで痛みがほんの少しだけ引いた。


 幸い傷口もそんなに深くない。包帯を巻いておけば時期に完治するはずだ。真琴はとりあえず先を急ぐことにした。壁に掛けてあった松明を一本拝借し恐らく洞窟のさきであろう道に進んだ。


 出口を目指して歩き続けようと思ったが、睡魔が真琴を襲った。あれだけの戦闘を潜り抜け、傷を負えばそうなるのも無理はない。近くで睡眠を取ろうと思ってもいい場所は見つからなかった。すると何かに足を躓かせた。


 もはやリアクションを取る気力もなかった。真琴は足元を見ると、白骨化した死体が転がっていた。真琴よりも前に同じくここを進もうとしたが、無念息絶えたのだろう。だが真琴もやはり限界だった。立ち眩みがしてきた。視界が次第にかすんでいく。



 ふと死体の足元が視界に映ると、壁にくぼみがあるのが確認できた。真琴はここなら休めるのではないかと思い、くぼみへ入ろうとしたとき、急に足元をつかまれた。


 真琴は恐怖し大声で叫ぶ。


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」


「……そんなに驚くなよ」


 そう言って足元の白骨死体がしゃべりだす。真琴は恐怖のあまり腰から剣を抜いた。その状況に白骨死体はなぜか真琴をなだめる。


「……落ち着け、落ち着けって!何もあんたを襲おうなんてこれっぽちも思っていねぇよ。」


「え、え?」


 そもそも白骨死体が喋りだすことが驚きだが、口にした言葉が気になった。すると白骨死体が真琴に質問をしてきた。


「あんた一体ここにどうやってたどり着いたんだ?」


 以外にも普通なことを聞かれる。


「どうやってって、森を抜けてゴブリンのボスを倒してここに来たが……?」


「なに!?あの森を越えてか、それにあのゴブリン達をやっつけたのか」


「あぁ、なんとかな……」


 普通ならこういう白骨死体、いわゆる骸骨(スケルトン)は、立ち位置的に敵に当たるはずなのに妙に敵対心が沸かないモンスターだ。


「それよりも、普段は敵のはずじゃないのか、こういうのって?」


「まぁ、確かにそうかもしれないが、俺みたいな奴はただ意識が消えるのを待つだけなのさ……」


 何故だか少しもの悲しさが感じられた。真琴は何かあると睨み骸骨(スケルトン)に投げかける。


「意識が消えるだけって、なんか理由でもあるのか?」


すると骸骨(スケルトン)は過去を語りだした。


「……随分前になるかなぁ、俺がまだ生きてた頃だ。その時は冒険者の駆け出しでこの洞穴に入ったんだ。そして無念にもモンスターに殺されちまってな……死後、不死者(アンデット)にまでなったが、別にどうしようもない。(むな)しいだけだよ」


 空気が急にどんよりと重くなった。聞かない方がよかったかと少し後悔する。


「…そんなに暗くなるなよ、第一話し出したのは俺なんだし……そうだ、お前さん名前は?」


「な…名前?」


 急な振りに少し焦る。


「名前ぐらいあるだろ、俺にだってあったんだからよ、ビシッとした名前あんだろ?」


「神宮寺 真琴」


「じ、神宮寺……真琴か、変わった名前だがいい名だな」


 死体と話し合っていることが少し変な感じだった。



「ところで真琴、お前はなんでここまで来たんだ?」


「…仲間を助けるため……かな?」



 骸骨(スケルトン)の口元がカタカタと動き出す。子笑いでもしているのだろうか。


「…仲間か…そうかそうか……」


「あんたは何一人で納得してるんだ?」



 骸骨(スケルトン)のしぐさに少し疑問に感じた。



「あぁ、少し昔のことを思い出しただけだ…」


「昔のこと?」


「あぁ、俺にも仲間はいたんだ……もうどれくらいかなぁ、十年は立っているかな」


「十年!?」



 骸骨(スケルトン)はここに十年もの間、横たわっていることに真琴は驚くが話はまだ終わってはいなかった。


「…あぁ、だが見てのありさまだ。だからよ、お前は救い出せよ仲間を」


「も、もちろんだ…」


 骸骨(スケルトン)と話をしたおかげか少し眠気が覚めた。これなら先へ進めると真琴は先を急ごうとした。

「仲間を助け出すためにも、先を急ぐぞ…」


「…待てよ」


「なんだ」


 急に骸骨(スケルトン)に呼び止められる。



「…真琴お前は傷を負ってんだろ?焦る気持ちは分かるが、今日は休め。」


「なんであんたに決められないといけない。」


 当然その疑問は沸くはずだ。理由もなしに行くなと言われて反発しないはずがない。



「…俺がお前に話せてるってことはもう日の入りだ。意志を持たない死の奴隷どもが湧く時間、て分けだ」


「どういう意味だ?」



 言い回しがあまりにも遠回りし過ぎて何を言っているのかわからなかった。少しめんどくさそうな素振りを見せたが骸骨(スケルトン)は訂正して答えた。


「…あぁ、お前もまだガキだなぁ……要するに俺とは少し違った、お前に敵対心向けた死体どもが湧く時間になったてことだ。」


「…危ないってことか?」


「要はそういうことだ。」


 骸骨(スケルトン)の忠告はとても有難かったが、それぐらいの危険は承知の上だった。真琴はやはり先を急ごうとする。


「…だから、てめぇはどうしてそこまで死に急ぐんだ!死人の俺が言うのもなんだがよ、命は大切にしろよ。」


「……こんなこと言うのもなんだけど、今の俺の命あってないようなもんだから」


「……やれやれ、」


 ドス!!



 骸骨(スケルトン)は拳を真琴の腹に突き当てる。急所は外されているが痛みは普通に感じた。


「…お前、何を……っ!?


「…この手は使いたくなかったんだがよ。」


 そう言いだすと骸骨(スケルトン)は横たわった体を起こし、地面に(うずく)まる真琴をくぼみに入れた。


「…すまねぇ、死体の体じゃ手加減できないんだ。」


「…お前、やっぱり敵だったのか……!」


 だが骸骨(スケルトン)は思いもよらぬ一言を口にした。


「…大人しく今日は休め。」


「は?」


 一瞬真琴の思考が停止する。骸骨(スケルトン)の言動と行動がうまく脳内で噛み合わなったが、何とか切り返す。


「い、いや…ちょっとまて!?休めって言うやつがいきなり人の腹殴るかよ!」


「あぁ、それね。コウでもしないとお前休まないだろ?ここに来るまでろくに休憩も取ってないんじゃ、さすがに死ぬ。」


「だけど……」


「仲間を助けたいって気持ちはよくわかるが、体力不足で死ぬなんて仲間の顔も立たないだろ?」


「…確かに、そうだけど。」


 骸骨(スケルトン)は以外にも優しかった。


「そう思うならそこで寝てろ。俺がその間見張っててやるから」


 真琴は疑問に思った。なぜそこまで親切にするのか……


「なんであんたは俺にそこまで親切にするんだ?」



 その質問に骸骨(スケルトン)は少し考えこんだ。


「…理由かぁ、なんつぅか……お前といると生前のことを思い出すんだ。それに、仲間を大切にするやつに悪い奴はいない。俺はそう思うんだ。それに……」


「それに?」


「……お前なら俺の果たせなかったことを果たせる。そう確信したからだ。…俺は仲間も救えずこんなとこでくたばった……同じ結末は俺もごめんだ。それに死人の俺にできるのは、道にを間違えないように道を正してあげることしかないからな」



 骸骨(スケルトン)はそう言って笑っていた。真琴は骸骨(スケルトン)の言葉を信用することにした。


「…今日はやっぱり休むよ、そんで明日……必ず助ける!!」



 真琴は骸骨(スケルトン)のご厚意に甘え、睡眠をとった。




 真琴は目が覚めた。目を開くといきなり骸骨がお出迎えだった。


「目覚めたか、真琴。」


「……ッ!?」


 まるで寝起きドッキリを食らったかのように、驚く。実際朝にいきなり頭蓋骨があったら誰でも驚くはずだ。


「そんなに驚くな、それよりもよく眠れたか?」


「あぁ、おかげさまで疲れは取れた。」


 傷も昨日よりかは痛みがしなかった。それよりもあいつの頭蓋骨が確認できるほど、明るかったのか不思議だった。


「なんで目を開けた時、お前の頭蓋骨が見えるほど明るかったんだ?魔法でも使えるのか。」


「いや、お前が持ってた松明にマッチで再点火しただけだ。」


 骸骨(スケルトン)は確かにマッチと言った。真琴はこの世界にもマッチがあることに驚いた。


「なんでマッチなんて持ってんだ?」


「あぁ、生前に持ってたものらしい。これだけ残ってた。死人には不要だしこれやるよ」


 そう言って骸骨(スケルトン)にマッチの箱を手渡された。


「あ、ありがとう」


 真琴は更に松明を手渡された。これで先に進める。


「迷うことなく行け、道をまっすぐ進めば付くはずだ。」


「あんたはどうする?」


「俺は役目が終わりってことだ…」


「どういうことだ……!?」


 骸骨(スケルトン)が徐々に消えかけていた。小さな粒子が吹き上がるかのように、姿が消えようとしていた。


「見てのとうりさ、俺は本来逝くべきところに向かうだけだ。」


「だけど……」


「既に死んだ身だ、気にするな……お前は今なすべきことだけを成すんだ…」


 そう言い残し骸骨(スケルトン)は消えていった。真琴は心を落ち着かせ、こう言い残し先へ進んだ。


「…ありがとう…」


 あれから、かなり歩いた。骸骨(スケルトン)の言っていたように道をまっすぐ突き進んだ。あれからどれくらい経ったかわからないが、だいぶたっただろう。


 いつになったら、洞穴を抜けれるのかと思ったとき、一筋の光が目の前に映った。真琴はその光にすがるように走り出した。段々と光は強く大きくなる。そして光の中を潜り抜けた!


 視界はホワイトアウトし、良く見えなったが次第に光が解け視界が安定する。完全に光が解け真琴はついに目にしたのだ……王都クーデリアを……


「あれが…王都クーデリア。」


 ゲームなどで見たような、ファンタジーの世界でしか見たことのない、大きなお城。そこを起点に街が広がる。真琴はガイア山脈の中層付近でから王都クーデリアを眺めていた。


「やっと、アイリスを救い出せる!」


 真琴は強く拳を握りしめた。


「…待ってろ、アイリス。」


 真琴はガイア山脈を下山し王都クーデリアを目指し歩き出した。



次回、真琴は見事にアイリスを奪還できるのか……!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ