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zero×騎士  作者: 朧月 燐嶺
第2章 覚醒
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森の先へ その2

 


 思わず声が漏れる。これで先に進めると、真琴は松明を手に洞穴の中へと足を踏み中は思ったよりも、広く奥へと続いていた。



 なんの変哲もない洞穴、だが意外と入り組んでいる。所々で分かれ道があり、どの道を行くかで迷うこともあったが、何の考えもなしに、直感に従い道を選ぶ。



 右へ左へ、または真っ直ぐ。何度か道を採択して思ったが、モンスターに合わないのが不思議でしょうがなかった。



 こういった人気がなく、誰も寄り付かない所ほどモンスターの類がいてもおかしくないと。もしかしたらただのまぐれかもしれないと思い、先へ進む。


 しかし、一向に目新しい道が見えないことに、真琴は不信感を抱き始めた。三つの道どれを選んでも同じ場所に返されているのではないかと考えた。



 試しに右側の道を進む際に、道の真ん中に小石を一つ置いた。そして今度は左を進む際に、小石を置いた。そして最後に、真ん中の道を進む際に、小石を置いた。すると三つの分かれ道すべてに、石が置いてあった。



「……だいたいわかって来た。」


 そう口にし、真琴はあえて後ろの道、四択目を選んだ。するとまた分かれ道が三つ目の前に見えた。



 しかし今度はどの分かれ道にも、石は置かれていなかった。RPGでよくある手法だ。なら、今のやり方で正しい道は採択できると確信し、何度となく繰り返した___


「……ふぅ、これで終わりか。」



 ため息をつくのもそのはず、真琴は今の作業を何十回とこなしたからだ。運が良ければ一回で次の分かれ道にも行けたはずだが、あいにく今の真琴にはツキがなかった。



 そのせいか無駄に労力を消費してしまたと思っていた。



 何はともあれ、これで先に進めることに変わりはない、今度は一本道だ。迷うことなどないと思い、先を急いだ。



 道中、洞窟に住まうモンスターと対峙した。洞窟蝙蝠(どうくつこうもり)や、低級スライム、オオサソリに大蚯蚓(アースワーム)。幸いそこまで数もいなく、今の真琴でも容易に対処できた。



「!?」


 真琴は何かに気が付く、明かりだ、明かりがみえる。だが、人気はなく、ここに足を踏み入れる(やから)はそうそういないと思っていた。だが考えられる事はある。



 これは推測だが、このガイア山脈を抜けるであろう洞穴に野盗か蛮族の類が住み着いている。そんな考えだが、八割がた推測はあっているだろう。



 他の道を探そうにもそれらしきものはなかった。ならば行くしかないと剣をぬき、慎重に足を進める。



 明かりのさす右の通路を曲がると、そこには誰もいなかった。真琴は一安心した。だけど気は抜けない、そう念じ、松明を消し先を進む。


 以外にも中は広くもなく、狭くもない普通に歩きやすい通路だった。壁に等間隔に松明が配置され、しっかりと火がついている。



 それなら、必ずどこかに野盗か蛮族は潜んでいるだろう。警戒心をむき出しにしていた真琴はあることに気が付いた。



 所々ドアが設置されているが、妙なことにどのドアも、破壊されていた。見た感じでは斧のような重い何かで壊した様に思える痕跡だった。



 ここで何かがあったことは明白だ。しかし何があったかは分からない。真相を知るにも、先に進まないと答えは分からない。真琴はさらに奥に進んだ。途中の曲がり角に階段があり、上へと昇った。



 この階も散策してみることにした。だが見えるものは下の階と変わらなかった。ドアは破壊され、人気が全くない。試しに部屋に入ってみるが、生活空間がそこにはあったと思われるが、今は見る影もない。そんな部屋ばかりだった。



 それにしてもこの場所は広いものだ。いったいどれほどの者たちがここで生活をしていたのか、数十……いや、数百はいたのだろうか?これだけ広いのに誰ともすれ違わないのが不思議で仕方がなかった。



 そうこうしているうちに新しい階段を見つけた。二階はほぼ見尽くしただろう、上の階へ進む。三階を捜索してみると、進んで右前の部屋から、物音がした。その物音を勿論、聞き逃しはしなかった。



 もしかしたら待ち伏せの可能性もあるかもと、ゆっくりドアを開けた。ドアのきしむ音が暗室に響いた。すると暗闇の奥から、銀色に輝く物が真琴めがけて投げつけられた!?それを寸前でかわす。


「あ、あぶねぇ……」



 真琴は後ろの壁に刺さった物を見た。それはナイフだった。大方、投射物が何かは見当がついてはいた。だが今は投げられた物よりも投げた奴だと考えていると、暗闇で声がした。


「……とうとうここも……感ずかれちまったかぁ……」



 よわよわしい声だった。



「感ずかれた?」



 何に感ずかれたのか真琴は聞き返した。するとあちら側が返答する。



「……何を聞き返してんだよ、この野郎……てめぇがやったことだろぉ。」



 真琴は身に覚えなどさらさらなかった。勿論真琴は何もしていない。つまり向こうが勘違いをしているのだ。だが、一つだけ確定した。ここで何かがあったことを____



「いや待ってくれ、俺はここに来た時には、既に何かあったようなありさまだった。」



「何?……いや、待てよ。お前はどこから来たか言え……」


 真琴は率直に来た場所を口にした。



「俺は、迷いの森から、奥地のユリゼアを越えてやってきた。」



「ユリゼアだと!?あそこにはおっかない鎧がいたはずだ、まさかたおしてきたってのかアイツを?」



 真琴は素直に答える。



「いや、倒してない。これは俺の推測だけど、迷いの森と奥地のユリゼアには、明確ではないけど境界線があると思うんだ。俺は何とかその境界線輪で走りきって、ここまで来た。多少の傷を負ったけど……」


「まさかそんなもんがあったとはな……なら少しは信用できるか、おいそこの!」


 真琴は呼ばれ返事をした。


「はい。」


「そこの壁にかかってる松明持って、俺んとこに来い。」


 真琴は言われたとおりに、壁にかけてあった松明を持ち、暗い部屋の中に入る。すると、壁にもたれかかった男が見えた。その男を見て、真琴は驚いた。男は左腕がなく、血を大量に流していた。迷うことなく男のもとに駆け寄った。



「あんた、いったいその傷はなんなんだよ?あっていきなり、酷いありさまじゃねえかよ。」


 男のひきつった顔が少し笑った。



「ふん……こんなガキに心配されるとは、俺も情けないもんだ。」



「そんなの関係ないだろ!?どうにかして傷を塞がないと…」



 今にも死にそうな男を見て、真琴は必至に助ける気でいたが、男が最後に残っている右手を真琴の方に向けた。



「俺のことはもういい、どうあがいたってこればっかりはどうにもなんねいからなぁ…」



「諦めんなよ、まだ可能性あるかもしれねぇだろ!」



「…いいから!俺の話を聞け……」



 男は振り絞れる力で真琴の手首をつかんだ。しかしほとんど力は入ってはいなかった。


「……今のところ、お前にしかこれは託せない。」


「託すって何を?」



 突然託すなどといわれても、訳が分からないのは当然だった。



「……今から少し前だ。ここにゴブリンが攻めてきた……普段ならこんなざまにはなんねいが、今回は奴らの方が上手だった。」


「上手?」


「あぁ、奴らは群れを成して攻めてきた。そこまではいい、今回は頭のきれたやろうと、圧倒的な力を持ったやつ、の二体がいやがた」


 それがなぜ敗因に繋がるのかを聞いてみる。


「別にその二体がいたからって、負けることなのか?」



「その二体が、それぞれ共生を取ってたから厄介なんだ。普通なら力があるものが先導して動きはバラバラになる。だが、今回は指揮の取れる賢いやつが命令を下し、力のある奴が全体をまとめる。まるで俺ら混血種(リジンヌ)見たいに上手くやりやがる……」


 男の言葉からは恐怖のようなものが感じられた。


「何があったかは分かった。それで託すっていったいなんなんだ?」


「ここからが本題よ、俺達は応戦したが(ことごと)く殺られた。その時だったよ族長が俺にこう言ったんだ、『お前は全ての門を閉め、他のやつを守れ』てな……だけど門は閉めれたが、皆は守れなかった。それでこのザマだよ」


「……」


 真琴は言葉すら出なかった。そんな真琴に男はこう言った。



「お前は、このガイア山脈を越える気だろ?なら、俺の最後の頼み聞いてくれ……あの忌々しきゴブリン共をぶっ殺っ……退治してくれ」


 そう言って男は鍵を真琴に手渡した。


「これは?」


「これで俺が閉じた門を開けれる。どのみちここには俺しか生き残ってねぇからな、閉じる必要もねぇ……」


「まだ諦めんなよ、助かるかもしれねぇだろ?」



 真琴の励ましは今の現状を変えられないが、男の心には響いていた。



「…最後にそう言ってくれるてのは嬉しいもんだなぁ……俺って生まれてこの方そんな事言われたこと無かったし、まぁどの道死ぬ事に変わりわねぇがその言葉ありがとよ…」



「なんでそう諦めきれんだよ?」



 真琴は理解できなかった。何故こうまで生きる事を望まないのか、ほんの少しでも抗ってもいいんじゃないのかと、すると男は事実を告げた。



「…俺ってばもう痛みもほとんど感じないんだよ…ほんの少し前までは、痛てぇって喚いてたのに、今じゃ何にも感じねぇ……お前の気持ちはありがてぇよほんとに、でも自分の体は自分がいちばんよく分かる。だから……さっさといきなッ…………」



 男の言葉が途絶えた。真琴は男を何度も呼ぶ、名前も知らないのに目の前で誰かが死んだ。初めてだった、誰かが死ぬのをこの目で目の当たりにするのが、ゴブリンが攻めてこなければ敵だったかもしれないのに、こんなにも心が揺さぶられたのは、あの時は以来だった。



 真琴は男の(まぶた)に手を当てそっと手を下ろした。男は目を(つむ)った。死んだと言うのに最後には笑っている。真琴は男の手から鍵を取り、先を進んだ。先へ進む為にも、ゴブリン達を倒すために、重たい足を一歩また一歩と門の方へ進める。



 しばらく歩くと門が見えた。真琴は手に持った鍵で門を開けた。その先には三体ゴブリンがいた。真琴は剣を持ち、ゴブリンの元に駆け寄った。


「うおぉぉぉ!!」


 けたたましい雄叫びを上げゴブリンに突っ込む、向こうも真琴の存在に気づき駆け寄ってくる。先手に真琴は手に持っていた松明を投げつける。見事にゴブリンの顔に命中すると、顔に松明が当たったゴブリンは痛みのあまり地面に転げる。



 残りのゴブリン達は仲間に構うことなく突っ込んでくる。真琴はまずは一体に袈裟斬りをかます。ゴブリンAは胴体を斜めに切られ地面に伏せる。今度はゴブリンBを胴切りで切り伏せる。




 不思議なことにこの時も刃折れの部分から透明な刃あるように見えた。ゴブリンBは上半身と下半身を分け、真っ二つになる。火傷の痛みに耐え起き上がったゴブリンCは頭を叩き割られ、虚しく地面に伏せる。そして真琴は幾体ものゴブリンを切り伏せ先へ進んだ。


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