未熟な心 番外
騎士に連れ去らわれた、アイリスが視点です。
気が付くと少女は、ベットに横たわっていた。手に掛けられていた縄は、木製の錠にすり替えられ、足には足枷がつけられ、さながら囚人のような気分だった。見たことのない場所にいることに深く違和感を覚えた。ベットから起き上がろうとしたとき声を掛けられそちらに顔を向けた。
「お目覚めかな、エルフの少女よ。」
思い出した。自分を連れ去った王国騎士だと。少女はその騎士を強く睨みつけた。騎士は全く同様すらしていなかった。逆に子犬でも見るような穏やかな目をしていた。だが少女は知っていた、その目の奥には計り知れないほどの何かを宿していると。
「…答えないか、まぁいい。それよりも君は国王の妃候補なんだからねぇ……」
少女はその言葉に強く反発した。
「それはどういうことですか?!」
「やっと口を開いた。…教えてあげるよ、君は前王から現王のベルナール陛下変わったことは勿論知っているね?」
「もちろんです…ですが現王に変わってから、あなた達王国騎士団の良いうわさは耳にしません」
騎士は笑みを浮かべ少女に告げた。
「確かにその通りだ。だが、王に忠誠を誓い王の命令に従う……それが騎士の務めだからな」
当然のように自分の言っていることを正当化する騎士に少女は腹が立った。
「…あなたのような者は騎士なんて呼べない!!」
「じゃぁ、どんな奴を騎士と呼べるんだ、私に敗れたあの少年か?」
少女は黙りこんだ。
「まぁそれは置いといてだ、君の名を聞かせてくれないか?曖昧で覚えていなくてね、アイラスだったか?」
「アイリスです……!?」
少女…アイリスは反射的に答えてしまい、手で口を塞ぐ。そのしぐさをみて騎士は笑った。
「ハハハ、君は面白い奴だ。」
「…」
アイリスはまたも黙り込む。すると騎士はこんなことをいいだした。
「…それで君は諦めてないんだろ、まだあの少年が助けに来ると、本当に思っているんだろ?」
アイリスはそう思いたかった。でも仮にもし助けに来たとしても、今度は本当に殺されかねない。命を落としてしまうぐらいなら、助けてくれなくたっていいと、そう思った。だが、アイリスの頭の中ではここ数日間の真琴との旅が走馬灯のように脳内をよぎる。その光景がアイリスを奮い立たせる!拳を強く握りしめ…
「…私は信じています、必ず彼が助けに来ると。だから私も諦めない……ここで諦めたら、彼の力になれないから!!」
騎士は少し驚いたそぶりを見せたが、依然とした態度で答える。
「ふん…まぁ、せいぜいその白馬の王子様が来ることを願ってるといい、けどその願いも儚く散ることになるだろうけどね」
そう言って騎士はアイリスの元を去った。アイリスは祈った。真琴が無事であることを、そして助けに来てくれることを窓から見えた星空に願いを込めて………
次回 「森の先へ」
真琴はアイリスを救い出すために動き出します。




