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1552  作者: 芳木 
中学2年 12月 『出会い』
2/3

1日目

 12月1日 (日)

 今日は、引っ越しの日だった。家族でこれから過ごす我が家のマンションで、荷物の整理とかした。


                       ***          


「いろはー、お隣さんにこれ渡してきてもらえるー?」

「んー?」

 新しくなった自分の部屋で、彩葉は段ボールに無造作に入れられた私物を、丁寧に入れればよかったと後悔しつつ、一つ一つ片づけている。声のした方を見てみると、母が少し困ったような様子で立っていた。

「えー……、嫌だよ。まだ自分の部屋も片付いてないのに。お父さんに頼めばいいのに」

「お父さん、夕飯の買い物に行ってて。今、居ないのよ」

「後でもいいじゃーん」

「忘れちゃうでしょ?お願いよ」

 半ば強引に、デパートで買ったと思われる、用紙に包まれた箱を渡された。

「もー、しょうがないなぁ……」


 彩葉が引っ越してきたマンション『わかば』は、二十階建てのファミリー型で一つの階に八世帯住むことができる構造になっている。有明家が住んでいるのは、十三階の右側から二番目で左隣は空き家になっているため、引っ越しの挨拶は一度だけでいい。右隣のドアには『久代』と記された表札が付いている。


「……」

 緊張しつつ呼び鈴をならす。何を言おうか考えてなかったため、若干焦りながらも「クラスでの挨拶の練習だと思えば……」と考えていた。


「はい。どちら様ですか」

 ガチャッという音と共にドアが開いた。出てきたのは綺麗な黒髪で眼鏡をかけた男の子だった。身長は彩葉よりも少し高く年上かと思ったが以前、母が引っ越し先のお隣に同い年の男の子がいると、話していたのを思い出した。しかし、彩葉にとっては目の前の相手が同い年かどうかだなんて、どうでもよかった。彩葉は一目見て心が高鳴るのを感じた。


「……」

「……あの」

 どうやらボーっとしていたらしく男の子は怪訝そうにこちらを見ていた。

「あっ!すみません!えぇっと……」

 見つめてしまっていたこともあり、恥ずかしくて言葉が詰まってしまう。そもそも、一対一だからクラスの挨拶よりもレベルが高いのではないかと思い始める。

「と、隣に引っ越してきた有明です!これっ、どうぞ!」

「どうも、……って」

 言うことを言って渡すものを渡すと、自分でも驚くほどの速さで『有明』と記された表札のドアの中に入った。

 男の子はそれを不思議そうに見ていた。


「どうしたのー?そんなに慌てて……」

 リビングに入ると母と兄がこちらを見た。

「なんでもない」

 とりあえず自分の部屋に戻りたくて素っ気ない返事をしてしまった。

「どこ行ってたんだよ」

「彩葉に、お隣さんに挨拶を頼んだのよ」

「俺に頼めばよかったのに」

「アンタじゃ不安で無理よ」

「は!?」

 彩葉はそんな会話を後ろの自分の部屋に入った。


「あー……」

 ボフッとベッドに飛び込むと出したばかりの枕に顔をうずめた。


 これが私の初恋の出会い。


                       ***


お隣に挨拶に行って、はじめての一目惚れ体験をした。

登場人物紹介2


久代 響 (くしろ ひびき)

 彩葉と同じマンションに住んでいる同級生。彩葉の片思い相手。

 無愛想で少し誤解されがち。運動も勉強もできるが人付き合いが苦手。

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