0日目
長さがバラバラの短編集モドキになると思います。
おかしい所があれば教えてくれると嬉しいです。
11月31日 (土)
明日から新しい家に引っ越すことになる。
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すっかり物がほとんど無くなった部屋を見渡す。
この家では父、母、兄、祖母、彩葉の五人暮らしだった。
引っ越しは祖母以外の四人で、祖母は「あの人と暮らしたこの家を出るつもりはない」そうだ。
彩葉は勉強がそれほど出来るわけでもなければ、運動も周りとそれほど差があるわけでもなかった。至って平均的な女の子だった。
しいて言えば、おばあちゃんっ子で色々な手伝いをしてきたため、洗濯や料理、掃除が得意で周りの子と比べてそれなりに女子力が高く、彩葉もそれだけが自慢だった。
「おーい、飯だってー」
部屋の外から兄の美園が声を上げている。
「わかったー」
彩葉はそう言うと早足で茶の間に向かった。
茶の間では、すでに祖母が夕食を運んでいた。
「ごめん、おばあちゃん! 手伝えなかった」
「いいんだよ、今日くらい。明日はもっと忙しいだろうし」
彩葉が謝ると、祖母はいつもの様な笑顔で返してくれた。
彩葉以外は揃っていたようで、彩葉が座布団の上に座ると五人で「いただきます」と言うとテーブルに並べられたおかずを、それぞれ食べ始めた。
「そういえば、引っ越し先の挨拶には一度行ったの?」
「はい、行きましたよ。まあ、明日もう一度いくつもりですが」
祖母の質問に、母が答えた。
「あ、あと、彩葉と同い年の男の子がお隣さんにいるのよ」
「え?」
その後、他にも色々と話したが彩葉は母が教えてくれた事が頭から離れなかった。
***
お隣さんが少し楽しみ。
有明 彩葉 (ありあけ いろは)
本作の主人公。父の仕事の事情で引っ越してきた。
掃除や料理などが得意で家庭的。テストでの結果はそれなりに良いが一夜漬けタイプなので頭が良いわけではない。