シスタ、ファウンダウト・ザ・トワイライト・ビュウ/十
……フラッシュ・バック、ワン。
「シスタ、どうして忘れちゃったか分かる?」彼女は人差し指を立てて問う。
……フラッシュ・バック、ツー。
「シスタ、どうして見えないのか分かる?」彼女はピースサインを作って問う。
……フラッシュ・バック、スリー。
「シスタ、どうして気付かなかったのか分かる?」彼女は顔の横でフレミングの右手の法則を表す。
そして十秒間の沈黙の後。
「要するにね」
彼女の声が背後から聞こえた。
咄嗟に振り返る。
彼女は大きな瞳でストレートにこちらを見つめていた。
フレミングの右手の法則の形はいつの間にか変化していてピストルになっている。
彼女は左目を瞑り親指で照準を合わせ人差し指と中指のダブルバレルで狙っている。その三本の指は煌めくシルバのリングで装っていた。
素敵な武器ね。
「要するにね、」発音の形にハッキリと彼女の唇は動いた。「要するにね、シスタ、ファウンダウト・ザ・トワイライト・ビュウ!」
そして。
収束。
破裂。
宇宙空間で星が爆発したようにこの場所とはそうなり、燃える。
星が燃えている。
いいえ。
違う、と何かを確実に認めるために首をゆっくりと振る。
それは天球儀だわ。
天球儀が燃えている。
それは核だ。
多層世界の真ん中でそれ灼熱に燃えていて、しかし次第にエネルギアを失いマッチくらいの小さな炎となった。
静かになった。
今は森閑としている。
そういう時代は長く続く。
しかし。
だが。
収束して破裂したもの。それは一瞬で燃え上がりストレートに、縦を貫いた。
貫通した形跡が見えた。
確実に見えたでしょ?
もしかしてそのカタチのこと?
ええ、そうよ。
これには強い意志がある。
これらの線描は共有すべきこと。
彼女は大事そうに小さな炎を両手で包む。
まるで卵を温めるようにね。
「シスタ! 天体世界望遠機械の線描は共有すべきことなの!」紫に色付く彼女は地平線の上で両手を広げてお口を大きく開けて叫んだ。「魔女だから分かるよね!?」
彼女の反芻する叫び声によってユウリははっと目を覚ます。
目を開ければここは小さなオレンジ色の明かりが枕元で灯って暗い夜の自分の部屋。
「……変な夢」ユウリは呟き、再び目を閉じた。
部屋の中はひんやりと冷たいくらいなのに体はじっとりと嫌な汗をかいていてそれが気になってユウリは中々寝付けなかった。
微睡みながら考えた。
とてもリアルな夢だったな。
それにしても夢の中の彼女は誰だった?
どこかで会ったことがあるような気がする。
彼女の声が耳の中で反響する。「シスタ、ファウンダウト・ザ・トワイライト・ビュウ!」
それはコレクチブ・ロウテイションの曲の名前でそして、ユウリたちのロックンロール・バンドが学園祭のライブのラストにと練習している曲である。そのミュージック・ビデオのアプリコット・ゼプテンバは髪をばっさりと切り、男装をしていた。ユウリは枕元のスマートフォンを手にし、シスタ、ファウンダウト・ザ・トワイライト・ビュウのミュージック・ビデオを再生させた。コレクチブ・ロウテイションのミュージック・ビデオのデータはユウリのスマートフォンには全て入っている。
アプリコット・ゼプテンバのショート・ヘアが見れるのはシスタ、ファウンダウト・ザ・トワイライト・ビュウのビデオだけだ。




