シスタ、ファウンダウト・ザ・トワイライト・ビュウ/二
ユウリはそれからずっと天球儀のことが気掛かりだった。一日中、起きてから眠りにつくまでずっと本家の天球儀について考えていたわけではもちろんないけれど、学校の帰り道の途中で夕焼けを綺麗と思ったときとか、ブレーメンで練習していてふと鏡に映る自分と鷹村コウサクと内藤マサヤと山吹の四人のロックンロール・バンドの群像を見たときとか、それから当然ながらステレオの隣に立つコナツがくれた真新しい天球儀が視界に入り込んだ瞬間とかに、自分の傍にあったという本家の天球儀について考えてしまうようになった。しかしそれだけ考えていても相変わらずユウリは過去に天球儀の反応を感じ取ることは出来なかった。
今はもうないわ、とユキコは言った。
それは本当?
生じる二つの疑問。それは過去にもなかったのではないか、ということと、実は今もあるのではないか、ということ。
疑問の反復によって、天球儀の存在は、それは概略とも表現すべきあり方だが、次第にユウリの中で大きくなっていった。しかし大きくなったからといって、それがユウリにとって大事な何かを意味するものなのか、というのは微妙な問題だった。心情的には、天球儀とは、何ら自分にとって価値も意味もないインテリアなのだ、というのがそうで、天球儀を記憶の中に発掘しようという強い意志を抱くことはなかった。天球儀についての関心は今は濃いが、きっと徐々に萎んで行き、そして気づかぬうちになくなってしまう類のものだろうとユウリにはぼんやりと感じられた。ユウリは天球儀に真面目に向き合わなかった。気掛かりは続いていたが、それよりもユウリはロックンロールに夢中だった。バンドはブレーメンで練習する度に理想的な形に近づいている。ユウリは興奮と緊張の両方をじんわりと感じていた。
ステレオの隣に立つ天球儀は一週間、回転していない。星座には埃が薄く纏い始めていた。ユウリはそれに気づいていたが埃を払おうとはしなかった。




