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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
隠れ里
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■□■


 ズキズキとする痛みが身体を(さいな)む。


 痛覚によって強制的に意識を呼び戻され、ハルは(うめ)きながら目を開けた。


「な…に…、こ、こ…?」


 声が(かす)れて、上手(うま)く言葉にならない。


 視界は薄暗く、目を開けているか疑問に思う程だった。幾度かの(まばた)きを繰り返し、(ようや)く見知らぬ何処かにいるのだと理解する。


 木製の天井と壁。


 自分が横たわっている事にも気付いた。


「…ぐっ…。」


 横を向こうと身体を動かした時、全身に激痛が走る。


 腕一本動かせない現状が分かり、非常に(あせ)った。


 頭の中で様々な憶測(おくそく)が飛び交う。


 そんな中、コツコツとテンポの良い音が近付いて来た。足音…、二足歩行の生物には違いない。


 キイッ…、と扉が開かれる音。ハルの全身に緊張が走った。


 咄嗟(とっさ)に目を(つぶ)り、(はや)る心臓と呼吸を無理矢理抑え込むハル。


 コツコツと音が近付き、やがてそれはすぐ隣で止まる。水音が聞こえ、額にヒヤリとした何かが置かれた。


 濡れタオル…だと理解した時、ソッと首元を(さわ)られる。冷たい感触と知らない何かの恐怖に、ビクッと跳ねなかった自分を誉めてやりたい。


「…はぁ…。」


 (なや)ましい溜め息が()れ、首からそれが離れた。


 人の手…だった、と思う。


 それはそれ以上何もせず、再び同じ場所…ハルの足元の方から出ていった。


 出入口は一ヶ所、恐らく人の住む家なのだと判断する。


 それでも、今は全く動けないのだ。とりあえず()(さま)危害を加えられる可能性は低いと感じ、ハルは警戒の為に張り詰めていた全身の力を抜く。


 自分がいた場所を思い出すと、記憶にあったのはパクストンの森付近が最後だ。現状、近くにジェフがいる気配もない。逃げたのかはぐれたのかは、勿論分からなかった。


 実際に何も分からないのだ。そして動く事も出来ない。考えても何も変わらないのだから…と、ハルは考えるのを()めた。


 左手側から空気の流れを感じる。窓があるらしいが、人の声は聞こえなかった。


 ただ風の動きを感じ、不意に生物の…鳥などの声が聞こえない事に思い至る。森の中ならば、最低でも鳥くらいはいる筈だ。


 捜索魔法を発動しようとして、己の違和感に気付く。魔法が…、魔力が使えないのだ。


 集中出来ない。しようとすると、頭の中にノイズが走るのだ。


「マ…ジ?」


 先程とは違った焦りが精神を(さいな)む。


 今まで魔力が使えなかった事は一度もなかった。この16年の人生の中で、ただの一度もである。


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