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ハル・クロフォードの場合  作者: まひる
隠れ里
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■□■


「あ~あ…、結局貰ってきちゃったなぁ。」


 上空を飛びながらの独り言。


 ハルはベンジャミン・アランから渡された褒賞金(ほうしょうきん)を断りきれず、布に包まれた紙幣を貰ったのである。


 勿論お金はあって困るものではないし、今回の出費は大きすぎた。それでも()に落ちないのは、あのベンジャミン・アランの表情ゆえか。


「ま…、仕方ないな。終わった事をいつまでもグチグチ言ってても何も変わらないし…って?!」


 空と大地を交互に視界に入れ、回るように飛んでいたハル。


 その一瞬視界に入ったものへ意識を取られ、慌ててそれを探す。隣を飛んでいたジェフが回転を止めたハルの左肩に乗ったが、気にする余裕もなかった。


 そして下界(げかい)に広がる森の中を注視(ちゅうし)し、再度真っ黒なものが見えたのだ。


「…ダン?」


 幾度かチラチラと木々の合間から見えた姿に、ハルは思わず呟く。


 ここは王都からかなり離れている為、歩いて来るには遠い筈だ。そう思いつつも、あれから何日経ったのだろうと考える。


 丸一日…。だがそれだけあれば、ダンの速度ならば可能な距離でもあった。


 本当に自分と離れたいと願っての行動ならば、追ってはならないだろうと思う。それでも…。


 ハルは納得していなかった。ダンが姿を消した理由も、話してくれなければ分からない。言葉が(つう)じるからこその葛藤のようなものだった。


「…このままじゃ、ダメだ。」


 結局自分本位だな、と自嘲(じちょう)めいた笑みが(こぼ)れる。


 それでも、もう一度話したかった。


 …ダンと話したい。


 ハルは決意し、急降下を(おこな)った。慌てたジェフが一旦(いったん)(ちゅう)(とど)まるが、すぐさまハルを追い掛けて降下する。


 そして奇妙な追い駆けっこが始まった。


 木々の合間を縫って行く影を追うハルは、一定の距離を離してついていく。相手が黒いので分かりやすいが、時折(ときおり)視界を(ふさ)ぐ木々が鬱陶(うっとう)しかった。


 ダンは何処へ向かっているのだろう、と意識が思考に沈む。追い付いて何を告げれば良いのか、もはや考えていなかった。


 反射的に身体が障害物を()けているが、それは長く続かない。意識は思考の中に深く沈み、過去の回想シーンを再生していた。


 そしてハルの目の前に、突然大木(たいぼく)のかさついた肌が現れる。


 ()けられなかった。


 思い切り正面から激突する。


 咄嗟(とっさ)に頭部を(かば)い、両の腕を出した事までは覚えているのだが…、その先はハルに分からなかった。


 頭の中では(いま)だ幼いダンが走り回っている。今より少し小さい自分と、子猫のようなダン。


 あの頃は…、幸せだった。


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