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居心地悪そうに周囲を見回すハル。
地下水路から無事脱出し、ハルは今、エディーの屋敷に招待されている。
アラン邸はこのオークショットでも大きな屋敷であり、かなりの財力がある事をそこかしこに見せていた。
「やぁ~、本当にありがとうございました。…私はここの主、ベンジャミン・アランです。この度は我が息子を魔物の脅威から救って頂き、誠にありがとうございます。」
大きな声を上げながら入ってきたのは、この屋敷の主、ベンジャミン。その後ろにはエディーを引き連れている。
その金髪青眼はエディーそっくりだが、何しろ体型がおかしい。首が見えない程の肉付き、括れを知らない胴体。その足は己の体重を支え切れず、車輪のついた椅子に座っての登場だった。
エディーは母親似なのだ、と無理矢理思う事にする。
「いえ、俺は依頼を遂行しただけです。」
ハルは淡々と答えた。
ハル達が座るフカフカなソファーの周囲には、ここの使用人らしい同じ様なお仕着せの衣服を身に纏った、見目麗しい女性達が大勢いる。
だがここにいる誰もが、黒髪黒眼のハルの容姿と黒の魔術師という二つ名を珍しがり、興味深そうにその瞳を向けていた。
早くもここから出たいと思う気持ちがハルに涌き出ても、誰も文句は言えないだろう。
「この度の依頼はオークショットの町長から出ているようですが、息子を救って頂いた私の方からも…少ないですが、どうかこれをお納め下さいませ。」
ベンジャミンは胸も腹も張ったまま、視線だけで使用人に何やら持ってこさせた。
使用人がテーブルに置いたのは、布に包まれたもの。
「500万ゴールドございます。どうかお納め下さいませ。」
ベンジャミンの下卑た笑いが気に入らないが、今回はハルも体力回復薬を使用している為、この金額には引かれる。
体力回復薬Lは一つ100万ゴールド。体力回復薬Mでも1万ゴールドで販売されていた。
ちなみに町長からの依頼報酬は500万ゴールド。Bランクの報酬金最低額である。
まだBランクになったばかりのハルは、依頼ボードの中からリーダーのハンターランクがB以上のパーティー向けに出されていた依頼を受諾したのだ。
受付のエリン・ハートリーに驚かれていたのは、その為。パーティー最大人数は6名だが、通常4~5名の班が多い。
そしてそういった依頼を一人で受けるのは、己の能力を過信したバカか、単独行動のハルくらいだった。




