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「長いローブの女…ですか。」
「あ、そのような目撃情報は幾つかありました。本日も南区画で見かけた者がいたとか。」
ハルの問い掛けに対し、自警団の二人は顔を見合わせながら口を開く。
「南区画、ね。この町は大きいからなぁ。夜じゃ、さすがにジェフは使えないし…。」
ブツブツと独り言を呟くハル。
「あの…隠れる場所とは、人があまり立ち入らないといった意味ですか?」
「え?あ、うん。大きくなくても良いんだけど、出来れば広い方が好ましいかな。」
急に問われて一瞬戸惑ったものの、長い間身を隠す事を己に置き換えて考えながら答えた。
「それでしたら、町の地下…ですかね。」
「あぁ、水路か。…黒の魔術師様。この町では今でこそ使われていませんが、町の地下を古い地下水路が通っています。」
一人の男の答えに、もう一人が思い出したかのように言葉を繋げる。
彼等の言葉から、自警団の面々も意識していなかった場所のようだ。
普段は使われていないからこそ、誰も立ち入らない。それこそ、潜伏場所にはもってこいの広さを有していた。
「それ、良いね。ありがとう。探してみるよ。」
ハルはニッコリと笑みを見せる。
それは年相応のものであり、噂にビクビクとしていた自警団の二人は逆に驚いた。
事実、知っているのは噂ばかりで、彼本人を見たのは初めてなのである。
「あの…、ご迷惑でなければ、今は何をお探しか聞いても宜しいでしょうか。」
未だ怯えはあるものの、噂の黒の魔術師が何をしようとしているのかが気になった男。
「ん?あぁ、連続児童誘拐犯捜し。依頼が出てたからね。」
それに対し、ハルは何でもない風に答えた。
自警団の情報網は必要であるし、特に個人的に危害を加えられた訳でもない。それもあって、ハルは彼等に対して敵意を抱いていないのだ。
「連続児童…、この町で今現在、大きな事件となってるものですね。」
「被害者の大多数がまだ見つかっておりません。」
自警団の方でも捜索はしているのだろうが、被害者が増えるばかりか、犯人すら見つかっていないようである。
「俺のギルドの方へも依頼が来たからね。せめて、新たな被害者を出さないようにしたいんだけど。」
「はい。我々も努力します。」
ハルの言葉に、自警団の二人も頷いた。
被害者が年端もいかない子供達である事からこそ、余計に強く守りたいと思う。
そこで漸く、日中もあまり子供達の姿を見なかった事に思い当たった。




